人文学研究科がシンポジウム「「MANGA」―人文学研究の新展開―」を開催しました

2019年03月11日

人文学研究科は、2019年3月2・3日に神戸大学文学部・大学院人文学研究科創立70周年記念事業キックオフシンポジウムとして、「「MANGA」―人文学研究の新展開―」を開催しました。

「マンガが私たちの現在を覆いつくしているにもかかわらず、その反面でマンガは捉えにくく、曖昧で散漫であり、様々な境界線を越えてあらゆる領域へと拡がっている」という認識から、このような曖昧で脱境界的なマンガを「MANGA」と呼び、その諸相に人文学の様々な側面からアプローチすることでマンガに対する新たな知見を得るとともに、人文学研究の新たな展開を探ることを目的として今回のシンポジウムが行われました。

2日は神戸大学出光佐三記念六甲台講堂において、竹宮惠子国際マンガ研究センター長(京都精華大学元学長)、青木保国立新美術館館長(元文化庁長官)による基調講演、王向華香港大学現代言語文化部准教授、油井清光人文学研究科教授による講演が行われ、その後、前川修人文学研究科教授の司会で4人の講演者によるパネルディスカッションが行われました。この1日目のシンポジウムでは、文化としてのMANGAの国際展開、社会とマンガとの接続など巨視的な視点から議論が展開されました。

翌3日は、神戸大学人文学研究科を会場とし、4つのセクションからなるシンポジウムを行いました。人文学研究の多様な領域から、MANGAの多様性を考えることが試みられました。

セクション1では、「日本美術史の中のマンガ・アニメ」をテーマとし、日本絵画とマンガ・アニメの共通点と差違がどこにあるかいう問いをめぐって、苫名悠大阪大谷文学部講師による「中世絵画と「漫画」―制作動機の観点から―」など発表が行われました。

セクション2では、マンガ・アニメに見られるアジア的なるものの表象の分析をとおして、戦後日本におけるアジアへの眼差しの有り様を捉え直すことが試みられ、秦剛北京外国語大学北京日本学研究センター教授による「東映映画の『西遊記』がどんな孫悟空を作ったか」などの発表が行われました。

セクション3では、「マンガとしての映像/映像としてのマンガ」をテーマとし、映像(映画やアニメーション)とマンガがデジタル化されつつある現在の三者の関係、相互作用をめぐって、渡邉大輔跡見学園女子大学文学部講師による「可塑的視覚メディアとしてのマンガと映画」などの発表が行われました。

セクション4では、神戸大学と京都精華大学が共同制作したアスベスト被害と予防を焦点としたマンガ『石の綿』とイタリアのアスベスト被害を描いたマンガ『Eternit. Dissolvenza in bianco』の制作に関わったマンガ家・研究者らに加え、すがやみつる京都精華大学マンガ学部教授を報告者とし、フォーラム形式で社会的義務を負うマンガとしての「機能マンガ」の可能性と課題の追求がなされました。

本シンポジウムは、油井教授を中心として進められてきた共同研究「日本サブカルチャー研究の世界的展開」、『石の綿』出版に結実した松田毅人文学研究科教授と竹宮惠子国際マンガ研究センター長を中心に進められてきたプロジェクトなど、人文学研究科のマンガ、ポップカルチャー研究の成果のひとつであると共に、人文学研究を新たに展開していくための出発点であるとも言えます。今後さらなる研究の広がりと深化を目指して検討を進めていきたいと考えています。

(人文学研究科)