植物の「呼吸」を支える遺伝子を発見

2016年03月07日

神戸大学大学院農学研究科の三宅親弘准教授、高木大輔さん(同博士後期課程)らの研究グループは、植物がもつ特定の遺伝子が、光合成の過程で発生する植物にとって有害な分子の働きを抑制することを明らかにしました。水不足などの環境ストレス下での植物の生育に関する研究に拍車がかかることが期待されます。この研究成果は2月16日、米植物生物学会専門誌「Plant Physiology」にオンライン掲載されました。

光合成は、植物が生育するうえで必要不可欠であると同時に、非常に危険な生命活動です。植物が光合成を行う際、余った光エネルギーが周りの酸素と反応し、活性酸素が発生します。活性酸素はさらに、葉緑体の内部でチラコイド膜を分解し、植物にとって非常に有害な活性分子「RCS」を生成し、このRCSが蓄積され、植物体内にさまざまな影響を及ぼすことで植物の枯死を引き起こします。

三宅准教授らは、このようなRCSのはたらきを抑制するための多くの遺伝子のうち、光合成や呼吸を始めとする植物の生理反応への影響が明らかになっていなかった「AOR」に着目。シロイヌナズナを用いて明暗サイクル環境(昼16時間、夜8時間)下での実験を行いました。その結果、AORを欠いた種では野生種に比べて十分に生育しないこと、昼間に光合成によりデンプンを蓄積させるが、夜間のデンプンの分解が抑制されていることがわかりました。しかし、24時間昼間の環境で観察したところ、野生種とAOR欠損種の生育度合いにほとんど差はありませんでした。この結果は、昼間光合成により蓄積されたRCSが、細胞質やミトコンドリアといった植物の呼吸に関する物質に影響を及ぼし、呼吸速度が低下することで植物の生育が阻害されるという新しい事実を示しています。

三宅准教授は、「水不足などの環境ストレス下では植物はその機能の20%程度しか発揮できていません。今回の研究によりAORが今後の温暖化環境では必要不可欠なものであることがわかりました。どの植物が環境ストレスに強く、どの植物が弱いのか今後も研究を進め、植物の環境ストレス克服につなげたい」と抱負を語っています。

研究に用いたシロイヌナズナ野生種(WT)とAOR変異種(aor-1,aor-4)を明暗サイクル環境で育てた時の表現型(Takagi et al., 2016)
葉緑体で発生したRCSが生育の低下を引き起こすまでのスキーム
掲載雑誌
Plant Physiology
論文タイトル
Suppression of chloroplastic alkenal/one oxidoreductase represses the carbon catabolic pathway in Arabidopsis thaliana leaves during night
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(農学研究科、広報課)