植物が薬理作用をもつ天然物を合成する過程を解明

2016年03月22日

神戸大学理学研究科の山本浩太郎さん(博士後期課程2年)と三村徹郎教授らの研究グループは、高橋勝利博士(産業技術総合研究所創薬基盤研究部門)、升島努博士(理化学研究所一細胞質量分析研究チーム)、山崎真巳博士(千葉大学薬学研究院)、水野初博士(静岡県立大学薬学部)らとの共同研究で、植物が薬理作用のある天然物をつくる過程での各物質の細胞レベルの分布を、初めて明らかにしました。これは、植物内での物質の合成、移動、分布を制御する未知のメカニズムが存在する可能性を示唆するものです。
この研究成果は、3月21日(月)(米国東部時間)の週に米国科学雑誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」の電子版に掲載される予定です。

ニチニチソウ

自ら移動することのできない植物は、昆虫や草食動物、病原体から身を守るため、多くの二次代謝産物を合成します。それらの物質の一部は、植物細胞の液胞に蓄えられ、動物に食べられた際に特定の作用を引き起こすことで外敵から身を守ります。私たち人類もニコチンやカフェイン、モルヒネに代表される植物の二次代謝産物を、嗜好品や医薬品として長く利用してきました。

今回の実験では、抗がん剤としての薬理作用をもつ天然物(テルペノイドインドールアルカロイド:TIA)を合成することで知られるニチニチソウを使用。ニチニチソウにおけるTIAの代謝は、一連の化学反応(図)がひとつの細胞内で完結せず、さまざまな細胞を中間代謝産物が移動し、最後に異形細胞とよばれる細胞に蓄積されます。しかし、物質が細胞間をどのように移動するのか、各細胞でどのように物質の合成や蓄積が制御されているのか、ということについてはこれまで解明されていませんでした。

研究グループは、「質量顕微鏡」による各物質の組織内分布の分析、さらに「単一細胞メタボローム解析」により各細胞が含む物質を測定しました。その結果、表皮細胞で合成・蓄積されていると一般的に想定されていた物質が、全く別の異形細胞で多く蓄積されていることがわかりました。
この研究成果は、植物でおこる天然物の合成や移動、分布を制御する未知のメカニズムが存在する可能性を示唆しています。また、今後ニチニチソウをはじめ有用な二次代謝物質の合成過程を詳細に解明することで、効率的な天然物の合成手法などの開発が期待されます。

質量顕微鏡を用いて明らかにされたニチニチソウ茎組織切片におけるインドールテルペノイドアルカロイド(TIA)の組織分布。生合成経路の順に物質が細胞間を移動し、二次代謝産物を合成する。茎切片の蛍光像(EC:表皮細胞、IC:異形細胞、LC:乳管細胞、PC:茎柔細胞)
掲載雑誌
米国科学アカデミー紀要
掲載論文
Cell-specific localization of alkaloids in Catharanthus roseus stem tissue measured with Imaging MS and Single cell MS
Kotaro Yamamoto, Katsutoshi Takahashi, Hajime Mizuno, Aya Anegawa, Kimitsune Ishizaki, Hidehiro Fukaki, Miwa Ohnishi, Mami Yamazaki, Tsutomu Masujima, Tetsuro Mimura
(「質量顕微鏡と単一細胞メタボローム解析によって明らかにされたニチニチソウ茎組織における細胞特異的アルカロイド分布」)
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(理学研究科、広報課)