早産児の感染症「後遺症なき」生存へ 新たな診断基準を提唱

2016年04月01日

神戸大学医学研究科小児科学分野の森岡一朗特命教授、同保健学研究科病態解析学領域の大澤佳代准教授、同医学部附属病院検査部の佐藤伊都子副技師長らの研究グループは、早産児の細菌感染症の早期診断に活用できる新たな基準を作成・提唱しました。今後、新たな基準を活用した早期診断・早期治療により、早産児の「後遺症なき」生存につながることが期待されます。この研究成果は、4月1日に英国科学雑誌「ScientificReports」電子版に掲載されました。

早産児の血清プロカルシトニンの基準曲線

早産児は免疫機能が未熟なため、予定どおりに出生した正期産児と比較して、細菌感染症に罹患すると死亡やその後の成長、精神運動発達に悪影響を及ぼす可能性が高いことが知られています。しかし早産児の場合、成人や小児で感染症発症のサインとされる発熱や、白血球数やC反応たんぱく質(CRP)の上昇が見られないことがあります。そのため、早産児の細菌感染症の早期診断に活用できる新たなマーカーの開発が求められていました。

森岡特命教授らの研究グループは、成人や小児で細菌感染症の早期診断に有用とされる血清マーカー「プロカルシトニン」に着目。2014年6月から12月までに神戸大学医学部附属病院総合周産期母子医療センターに入院した新生児283人(1267血清検体)を調査しました。その結果、正期産児はプロカルシトニンの数値が出生後一時的に上昇した後、生後5日までに成人や小児の正常基準値である0.1ng/mLに戻ったのに対し、早産児では生後9週までかかることがわかりました。

研究グループはこれらの結果をもとに基準曲線(中央値と95パーセンタイル値)を作成。さらに、感染症を発症した3症例にこの基準に当てはめたところ、いずれも95パーセンタイル値の曲線を上回ることが明らかになりました。

今回提唱した新たな基準が、早産児の細菌感染症の早期診断に活用されることで「後遺症なき」生存につながることが期待されます。森岡特命教授は、「不要な抗菌薬の使用抑制にも活用できる可能性がある。今後、基準曲線の感染症診断における詳細な精度について検証していきたい」と話しています。

早産児と正期産児の免疫機能の比較(岩谷、森岡:Neonatal Care. 28: 1065-9, 2015)
早産児の感染症発症症例の血清プロカルシトニン値の推移
(a)在胎22週4日、体重482gで出生の児。42日目に感染症を発症。血液よりエンテロバクターという細菌を検出し、敗血症と診断。
(b)在胎27週5日、体重1014gで出生の児。12日目に感染症を発症。人工呼吸管理のチューブより緑膿菌という細菌を検出し、肺炎と診断。
(c)在胎30週3日、体重1546gで出生の児。55日目に感染症を発症。各種細菌学的検査を行ったが有意な細菌は検出されなかったものの、児の状態や所見より、臨床的敗血症と診断。
掲載雑誌
Scientific Reports
論文タイトル
“Age-specific percentile-based reference curve of serum procalcitonin concentrations in Japanese preterm infants”
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(医学研究科、広報課)