光と熱で液体と固体を行き来する新たな物質を開発

2016年05月12日

神戸大学理学研究科の持田智行教授と舟浴佑典博士(現・山口東京理科大学)らの研究グループは、光を当てると固体に変化し、加熱すると液体に戻る金属錯体物質を世界で初めて開発しました。今後、再利用可能なプリント基板材料などへの応用が期待されます。この研究成果は、5月7日(日本時間)に英国の化学誌「Chemical Communications」に掲載されました。

配位高分子※1は、さまざまな機能を持たせる事のできる機能性固体として知られています。近年盛んに研究が行われ、多くの合成方法が開発されていますが、そのほとんどが溶液中の化学反応によるもので、液体に光を照射して配位高分子を生成する方法は、これまで例がありませんでした。

物質の性質を光や熱などの外部刺激によって制御する技術は、エレクトロニクス材料分野において非常に重要です。例えば、プリント基板などの作成に用いられる技術では、光を照射することで固まる性質をもつ材料(感光性樹脂)が用いられていますが、一度使用すると再利用が困難という課題がありました。

持田教授らの研究グループは、金属イオンと有機分子の結合を光や熱で可逆的に制御できれば、外部刺激によって性質が大きく変化する材料が実現すると考え、シアノ基を導入したルテニウム錯体からなるイオン液体※2を世界で初めて開発しました。この液体は、無色透明で揮発性がなく、マイナス50度でも凍らずに液体として存在します。紫外光を数時間照射すると配位高分子固体に変化し、130度で1分間加熱すると再び元のイオン液体に戻るという特徴があります。

このように、光と熱によって、イオン液体と配位高分子固体という全く異なる結合状態と化学的性質を持つ物質間での可逆的な相互転換を実現しました。

今回の研究により、再利用が可能な光硬化性液体の開発に成功しました。プリント基板や光造形、接着剤用途などへの応用が期待されます。持田教授は、「今後さらに分子設計をすすめ、生成した配位高分子にガス吸脱着能などの機能性を持たせる研究に取り組みたい」と話しています。

イオン液体と配位高分子の化学構造(上)および写真(下)。 イオン液体は無色透明の液体だが、紫外光を当てるとルテニウムとベンゼン環(アレーン環)の結合が切れ、かわりにルテニウムの間をシアノ基が架橋した構造が形成されるため、黄色の配位高分子へと変化する。生成した固体は、加熱によって元の液体に戻る。

用語解説

※1: 配位高分子
金属イオンと有機配位子が配位結合で無限に連結した物質。金属イオンと配位子の組み合わせに応じて、種々の電子物性や物質吸脱着能を発現させることができるため、機能性固体として近年盛んに研究がなされている。
※2: イオン液体
陽イオンと陰イオンで構成される室温で液体の塩。有機分子が陽イオンとなっているものが多く、塩化ナトリウムのような通常のイオン性固体に比べて極端に融点が低い。難揮発性、不燃性、イオン導電性などの性質を持ち、環境低負荷な反応溶媒や電解液としての応用が期待されている。
掲載雑誌
Chemical Communications
掲載論文
Reversible transformation between ionic liquids and coordination polymers by application of light and heat
Y. Funasako, S. Mori and T. Mochida, Chem. Commun. 2016, 52, 6277–6279.
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(理学研究科、広報課)