咲かない花をつける新種のラン科植物 「クロシマヤツシロラン」を発見

2016年10月13日

神戸大学大学院理学研究科の末次健司特命講師は、鹿児島県三島村黒島で未知の菌従属栄養植物を発見し、発見場所の地名を冠して、「クロシマヤツシロラン(Gastrodia kuroshimensis)」と命名しました。本研究成果は、10月12日に、国際誌「Phytotaxa」に掲載されました。

植物の中にはその最たる特徴である光合成をやめ、菌類に寄生して一方的に栄養を搾取するもの、すなわち菌従属栄養植物(※1)が存在します。菌従属栄養植物は光合成を行わないため、花期と果実期にしか地上に姿を現しません。また花期も短く、サイズも小さいものが多いため、見つけることが非常に困難です。これらの要因から、植物の調査研究が比較的進んでいる日本においても、菌従属栄養植物の正確な分布情報についてはあまり解明が進んでいないのが現状です。そこで末次健司特命講師は、日本国内における菌従属栄養植物の分布の調査と、その分類体系の整理に取り組んでいます。

黒島で見つかった「クロシマヤツシロラン」

その一環として実施した鹿児島県三島村黒島での調査の中で、末次特命講師は、2016年4月に未知の菌従属栄養植物を発見しました。この植物は、ラン科オニノヤガラ属のトカラヤツシロランに近縁であるが、蕾のまま開花しないことや花の内部構造が異なることから、トカラヤツシロランと区別できることがわかりました。そこで本種を新種として記載し、発見場所の地名を冠して、「クロシマヤツシロラン Gastrodia kuroshimensis」と命名しました。

この植物の興味深い点として、光合成を捨て去っているのみならず、蕾のまま自家受粉するため花を咲かせないという点が挙げられます。菌従属栄養植物は光合成を行わないため、光の届かない暗い林床を生育地としていますが、そのような環境には、ハナバチやチョウといった通常花を訪れる昆虫がほとんどやってきません。そのため、クロシマヤツシロランは暗い林床でも確実に繁殖できるように、受粉に昆虫のサポートを必要としない自家受粉を採用し、さらには花を咲かせることもやめた可能性があります。つまり、菌従属栄養植物が光合成をやめる過程で、花粉を運んでくれる昆虫など、他の生物との共生関係までも変化させた可能性があります。

今後も菌従属栄養植物の分類学的、生態学的研究を行うことで、植物が「光合成をやめる」という究極の選択をした過程で起こった変化を、一つでも多く明らかにしたいと考えています。 


用語解説

※1:菌従属栄養植物
光合成能力を失い、菌根菌や腐朽菌から養分を奪うようになった植物のこと。ツツジ科、ヒメハギ科、リンドウ科、ヒナノシャクジョウ科、コルシア科、ユリ科、ラン科、サクライソウ科、ホンゴウソウ科などが該当し、これまで日本からは約50種が報告されている。

掲載雑誌

Phytotaxa

掲載論文

“Gastrodia kuroshimensis (Orchidaceae: Epidendroideae: Gastrodieae), a new mycoheterotrophic and complete cleistogamous plant from Japan”

Kenji Suetsugu

関連リンク

(理学研究科、広報課)