土星の輪、誕生の謎を解明

2016年10月17日

神戸大学大学院理学研究科の兵頭龍樹研究員、大槻圭史教授、東京工業大学地球生命研究所の玄田英典特任准教授、パリ地球物理研究所/パリ・ディドゥロ大学のシャノーズ教授の研究グループは、コンピュータ・シミュレーションを用いた研究に基づき、土星リング形成に関する新たなモデルを発表しました。本研究の結果は他の巨大惑星にも適用でき、土星と天王星のリング組成の違いも説明可能です。この研究成果は10月6日に米国の国際学術雑誌 Icarus にオンライン掲載されました。

太陽系の巨大惑星は非常に多様性に富むリングをもっています。例えば観測によると、土星リング粒子は95%以上が氷から成りますが、天王星や海王星のリングは暗く、リングを構成する粒子は岩石成分も多く含むことが示唆されています。 17世紀に初めて土星リングが観測されて以来、地上の望遠鏡のほか、探査機ボイジャーやカッシーニによってリングの詳細な観測が進んできました。しかし、リングの起源には不明な部分が多く、またその多様性の原因を説明することはできていませんでした。 

図1:(左)探査機カッシーニによる土星リングの観測画像。NASA提供
            (http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PIA06077)。
      (右)ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した天王星リングの観測画像。NASA提供
            (http://photojournal.jpl.nasa.gov/catalog/PIA02963)。

本研究では、約40億年前に太陽系内で起こった“後期重爆撃期※1”と呼ばれる巨大惑星の軌道不安定期に注目しました。かつて、太陽系外縁の海王星以遠の軌道には、冥王星サイズ(地球の約5分の1の大きさ)のカイパーベルト天体※2が数千個存在していたと考えられています。そこで本研究ではまず、後期重爆撃期にこのような大きなサイズのカイパーベルト天体が、巨大惑星からの潮汐力により破壊されるくらい惑星から十分近いところを通過する確率を見積もりました。その結果、土星、天王星、海王星は、少なくとも数回のそのような大きな天体の近接遭遇を経験することがわかりました。

次に、そのように大きなカイパーベルト天体が、巨大惑星の近傍を通過する際に惑星からの潮汐力を受けて破壊される過程を、コンピュータ・シミュレーションを用いて調べました(図2)。シミュレーションの結果は、カイパーベルト天体の初期の自転の状態、惑星への最接近距離などによって様々です。しかし多くの場合で、破壊されたカイパーベルト天体の初期質量の0.1~10%程度の破片が、巨大惑星周りに捕獲されることがわかりました(図2a、b)。このようにして捕獲された破片の総質量は、現在巨大惑星がもつリングの質量を説明するのに十分です。つまり、十分大きなカイパーベルト天体ひとつが巨大惑星のごく近くを通過し破壊されたことにより、現在の惑星リングが形成されたと考えることができます。本研究ではさらに、捕獲後の破片の長期的な進化を、国立天文台が所有する計算機等を用いたシミュレーションにより調べました。その結果、捕獲直後の破片は数キロメートルサイズと大きなものであるが、その後、破片同士の衝突を繰り返すことによって徐々に粉々になるとともに軌道も円軌道に近づき、現在観測されるリングが形成されることがわかりました(図2b、c)

さらに、このモデルは以下のように、土星と天王星のリングの組成の違いも説明できます。天王星や海王星は土星に比べて惑星本体の密度が大きくなっています(天王星1.27g cm-3、海王星1.64g cm-3、土星0.69g cm-3)。このため、天王星や海王星の場合には、惑星からの重力の影響を強く受ける、ごく近傍を通過するような遭遇が可能となります(土星の場合には惑星本体の密度が小さく質量に対して惑星半径が大きいため、そのようなごく近傍を通過しようとすると土星本体に衝突してしまう)。その結果、惑星近傍を通過するカイパーベルト天体が内側に岩石核、外側に氷マントルという二層構造をもっていた場合、天王星や海王星の場合では、岩石核まで破壊・捕獲され、岩石成分も含むリングが形成されます。これに対して土星の場合は通過する天体の氷マントルのみが破壊されるため、氷から成るリングが形成されます。このように本研究の結果は、土星リングと天王星(および海王星)リングの組成の違いも説明できます。

本研究の結果は、巨大惑星のリングが太陽系の惑星形成過程の中で、自然に形成された副産物であることを示しています。このため、近年多数発見されている太陽系外の巨大惑星においても、同様な過程でリングが形成されると考えられます。系外惑星の衛星-リング系に関する今後の観測が期待されます。

図2:リングの形成過程の概念図。点線は、巨大惑星の重力が強く働き潮汐破壊が起こる臨界距離。(a)カイパーベルト天体が巨大惑星に近接遭遇をする際に、巨大惑星の潮汐力によって破壊される。(b)潮汐破壊によって破片の一部が巨大惑星まわりに捕獲される。(c)破片同士の衝突によって捕獲された破片は破砕され、軌道も徐々に円軌道に近づき、現在のリングが形成される(Hyodo, Charnoz, Ohtsuki, Genda 2016, Icarusの図を一部改変)。


用語解説

※1:後期重爆撃期
約40億年前に起こった太陽系の軌道不安定期。この時期には海王星以遠の軌道に、惑星に成長しきれなかった天体が現在よりも多数存在していたと考えられる。巨大惑星との重力相互作用の結果、これらの天体の軌道が大きく乱され、太陽系全体に無数に飛び交い、形成後の惑星にも多数衝突したと考えられるため、このように呼ばれている。月表面のクレータの大部分もこの時期に形成されたと考えられる。
※2:カイパーベルト天体
海王星より太陽から遠い位置に無数に存在している氷岩石天体。

論文情報

タイトル
”Ring formation around giant planets by tidal disruption of a single passing large Kuiper belt object”
著者
Ryuki Hyodo, Sébastien Charnoz, Keiji Ohtsuki, Hidenori Genda
掲載誌
Icarus
DOI
10.1016/j.icarus.2016.09.012

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(理学研究科、広報課)