2013年ノーベル物理学賞に「ヒッグス粒子」決定でATLAS実験に寄与した神戸大グループが記者会見

8日夜、2013年のノーベル物理学賞にヒッグス粒子の存在を提唱した英エジンバラ大学のピーター・ヒッグス名誉教授とベルギー・ブリュッセル自由大学のフランソワ・アングレール名誉教授の2人が選ばれました。これを支えたのがスイス・ジュネーブ郊外の欧州合同原子核研究機構 (CERN) でのヒッグス粒子発見です。巨大なATLAS測定器とCMS測定器を持つ2つの実験チームが、大型ハドロン衝突型加速器 (LHC) で発生する高エネルギー陽子・陽子衝突の反応を観測するうち新たな素粒子を発見したと、昨年7月に発表したのが始まりでした。2つの実験チームは今年3月、「ヒッグス粒子発見、ほぼ確実」と発表。さらにATLASの国際研究チームは今月7日付の雑誌「Physics Letter」に「新素粒子はヒッグス粒子と確定した」との研究報告を掲載。「ヒッグス粒子」へのノーベル賞の期待が高まっていました。

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ATLASの国際研究チームに神戸大学は当初から参加。巨大測定器の建設やその後の測定、分析に日本チームの柱として貢献してきました。ヒッグス氏へのノーベル賞決定を受けて、8日午後8時から神戸大学のグループが記者会見。山崎祐司・理学研究科准教授、越智敦彦助教、ヒッグス粒子のデータ解析をしている中国人研究員のユアン・リーさんの3人が出席しました。午後7時45分すぎにパソコンの動画中継で2人への受賞が決まると、見守っていた3人と学生たちが歓声。山崎准教授は「感動しました。世界中の人がひとつになって協力して成果を出せたのが何よりうれしい。LHCは1年半後に今の8テラ電子ボルトから13テラ電子ボルトに出力を上げるので、暗黒物質など今まで確認できなかったものの存在がわかればうれしい」と話しました。

越智助教は「ATLAS実験には世界で3000人、日本でも100人近くが参加して得意な分野をそれぞれ生かして実験してきました。ヒッグス粒子の発見はもともとの目的のひとつだったので、これがノーベル賞に結実してとてもうれしい。LHCの出力が上がる1年後には、私たちは未知の領域に踏み込んで行きます。わくわくしますし、もっとわけのわからないものが見つかってほしいです」と語りました。

ユアン・リーさんも「データ解析をしたが、実験チームの一人として貢献できたのは誇りだ」と話しました。

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神戸大学チームを率いた藏重久弥・理学研究科教授も出張帰りに駆けつけ、「ヒッグス粒子が見つかって標準模型が完成し、50年前に提唱した二人にノーベル賞が授与されるお手伝いができてうれしい。これからLHCの出力が上がると何が出てくるかわからないびっくり箱状態になる。楽しみにしています」と話しました。

ヒッグス粒子を発見したATLAS実験は38カ国による国際実験です。参加している研究者は約3000人。神戸大学グループとして今では素粒子の研究者が教員だけで5人、研究生・院生ら7人も参加しています。

LHCはスイスとフランスの国境地下に建設された全周27キロの円形加速器です。94年から14年かけて2008年に完成しました。そのLHCにはヒッグス粒子を測定するための測定器が2つ設置されました。アメリカなどのCMSと日本グループが参加したATLASです。ATLASの建設に当たって日本グループはTGCというミューオン (*注: 電子とよく似た性質を持つが質量の大きい粒子。宇宙線に多く含まれている) 検出器の一部を担当することになりました。神戸大学の分担はつくばの高エネルギー加速器研究機構で作られたTGCの全数検査で、2001年から4年間、学内に立てた専用のプレハブで、TGCに測定回路を取り付けて、空から降ってくるミューオンにどう反応するかを昼夜交代で測定しました。このTGCをジュネーブに送り、ミューオン検出器の大きな円盤に貼り付け、無数のケーブルとつなぐ作業を神戸大学から派遣された助教や院生が行いました。その後も神戸大学のグループはATLAS実験に関わり続けています。TGC検出器によるデータ取得が安定して行えるよう常に改良を加え、ヒッグス粒子などの新現象の信号をミューオン検出器で余さずとらえることに成功しました。また、ヒッグス粒子の探索をはじめとしたデータ解析に、研究員、大学院生が今も寸暇を惜しんで取り組んでいます。

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2013年10月8日

(広報室)