神戸大学

第154回 オープンゼミナール

2011年10月01日

日時
2011年10月1日 (土) 14:00~17:00
場所
神戸大学工学部 C1-301教室
内容
  1. 東日本大震災における被災者支援法制の運用と課題 (14時~16時)
    山崎栄一 (大分大学教育福祉科学部准教授)
    田中健一 (神戸大学大学院工学研究科博士後期課程)

    東日本大震災は、これまでとは異なる未曾有の超広域かつ複合的な災害であった。このたびの大震災は、全国に被災者が避難していることもあり、被災地であろうとなかろうと、全国的に被災者の生活再建支援の現実やあり方を考えさせられるきっかけとなっている。単に、自らの地域が被災したときに備えるのではなく、いつでも他の地域の被災者を効果的に支援することができるように、平常時から災害時における支援に関する知識を身につけておく必要性がある。今回のゼミナールにおいて、被災者の生活再建に関する法制度について参加者に概観してもらうことで、そういった知識や問題意識を身につけるきっかけにしていただければ幸甚である。(山崎栄一)

  2. 東日本大震災における災害法制の課題―被災者支援と復興の調和へ向けて (16時~17時)
    金子由芳 (神戸大学大学院国際協力研究科教授)

    災害法制は従来、被災者支援法制と復興段階の法制とに分け、別個に論じられてきた。しかし東日本大震災においては、津波災害の特色ともいうべく、復興計画の策定・実施に長期間を要すること、またその間に、広大な浸水危険地域を対象として経済活動の制限ないし自粛が不可避であることから、その長期にわたって生計の糧を失う生業被災者の支援が必須の課題となっている。つまり被災者支援と復興との同時平行が求められ、その相互調整が制度設計の課題である。しかるに様々な事情でこの調整は暗礁に乗り上げている。一つは現行制度上、被災者支援は都道府県が、復興は被災市町村が担う分離構造ゆえに、生業被災者の支援がどちらからも取りこぼれる傾向がある。つまり県の被災者支援は復興段階に入るや保健福祉など狭義の生存権保障に特化しつつあり、生業支援は復興過程の経済活動の制限・自粛に伴う「補償」の問題だとして、市町村任せのマインドが働こう。逆に市町村からすれば、復興計画があろうとなかろうと被災者は生業を流失したのだから「補償」の問題ではなく、「支援」の問題であるとして県に委ねるマインドが働く。背後には復興財源の問題がある。この県と市町村との所管の谷間で、中小企業庁・水産庁等による産業振興施策が埋め合わせを図っているが、真に困窮する零細事業者には届いていない。本報告は、岩手県沿岸被災地における聴取り調査に基づき、このような津波災害特有の支援と復興の調整問題を読み解くことを試みる。(金子由芳)

問い合わせ先
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神戸市灘区六甲台町1-1
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