近年、EU (欧州連合) を取り巻く国際環境には大きな変動があった。一つに、地中海の対岸での「アラブの春」とその余波での大量の難民の押し寄せである。ソーシャルメディア (SNS) を用いた社会動員を背景に突き進んだ「アラブの春」を受けて、EUとしての移民政策や域内移動の自由についての見直しが迫られ、またノルウェーやフランスではイスラム原理主義者による深刻なテロ事件も起こった。もう一つはユーロ危機と欧州信用不安であり、これによりイタリア、スペイン、ギリシャ、さらにフランスでも政権交代が起こった。こうしたEU内外の大きな変動を受け、注目されるのがEU各国はこれまで通りEU自体を重視するのか、それともむしろナショナルな枠組みに閉じこもるのかということである。そして、こうしたプロセスのなかで、EU市民のアイデンティティにはどのような変化が生じているのか。
そこで本ワークショップでは、(1) 「アラブの春」がEU市民のアイデンティティや政治意識にどのような変化をもたらしたか、(2) EUのあり方をめぐる議論やEU内でのアイデンティティの変容や社会動員においてもソーシャルメディアの重みが増しているのではないか、(3) こうしたEUにおけるアイデンティティの変化がEUの対外関係 (特に地中海関係、さらには日本との関係) にどのような影響を与えているかに注目し、EUの変動について考察する。
開催概要
- 日時
- 2013年2月6日 (水) 14:00~17:30
- 場所
- ブリュッセル自由大学 (蘭系VUB) Etterbeekキャンパス E0.06教室
- 使用言語
- 英語
- 主催
- 神戸大学国際文化学研究科
- お問い合わせ先
- 坂井一成 (国際文化学研究科)
メール: kazu@harbor.kobe-u. ac.jp※メールアドレスの一部 (ac.jp の前など) には、アドレス収集ロボット対策として半角スペースが挿入されております。メールアドレスご使用の際には、適宜修正願います。
- プログラム
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司会: 坂井一成 (神戸大学准教授)
時間 内容 14:00~15:20 報告 - Kolja Raube (ルーヴァン・カトリック大学講師) 「危機から統合へ? ヨーロッパの多様性、アイデンティティ、トランスナショナリズム、制度変革」
- 齋藤剛 (神戸大学准教授) 「北アフリカの政治変動とヨーロッパへの波及」
- 村尾元 (神戸大学准教授) 「ソーシャルメディアとヨーロッパのアイデンティティ」
- Noemi Lanna (ナポリ東洋大学准教授) 「いかなる危機か? 日本・EUと北アフリカの政治変動」
15:20~15:40 休憩 15:40~16:20 討論 - 松井真之介 (神戸大学研究員) (EUのマイノリティ研究の視点から)
- 西田健志 (神戸大学講師) (情報工学の視点から)
- Dimitri Vanoverbeke (ルーヴァン・カトリック大学教授) (日欧関係の視点から)
- 岩本和子 (神戸大学教授) (日欧関係の観点から)
16:20~17:30 ディスカッション