神戸大学

第174回 都市安全研究センター (RCUSS) オープンゼミナール

2013年07月20日

都市安全研究センター (RCUSS) オープンゼミナールは、広く社会に都市安全研究センターの活動を広く公開するとともに、関連する各分野の皆様からの報告を通じて、安全な社会としていくための研究や実践のあり方を議論しています。大学の教職員・学生のほか、安全・安心に関心を持つ市民の方々や、コンサルタントなどの民間企業の方々、自治体の消防・建築・地域関係の職員の皆様などが参加されています。

参加費は無料で、事前登録不要です。ご興味のある方は遠慮なくご参加ください。

開催概要

日時
2013年7月20日(土)14:00~17:00
会場
神戸市役所4号館 (危機管理センター) 1階会議室
(所在地: 兵庫県神戸市中央区江戸町97-1、TEL: 078-322-5740)
司会
神戸大学都市安全研究センター教授 北後明彦
お問い合わせ先
神戸大学都市安全研究センター
(所在地: 兵庫県神戸市灘区六甲台町1-1、TEL: 078-803-6437、FAX: 078-803-6394)
詳細情報
神戸大学都市安全研究センター RCUSSオープンゼミナール
プログラム
  1. 「想定外」の地震被害:それでも「問題外」ですか?
    上西 幸司 (国立大学法人東京大学 大学院工学系研究科 准教授)

    「地震」と聞いて、我々が感じる「揺れ」あるいは「振動」を思い出す人がいる一方、震源から伝わっていく「波動」を頭に浮かべる人もいる。地震学は、「振動」 (地震計による記録) と主に地下を伝わる (目に見えない) 「波動」との間に、より合理的な関係を見出だすべく発展してきた。しかしながら、特に工学の世界においては、「振動」と「波動」という用語が再三混同して使われ、また、研究手法も従来の「想定内」の低周波水平動による「振動」解析から抜け出せていないように見受けられる。

    本講演では、国内外で発生した複数の地震に際し見られた「想定外」の構造物被害の発生メカニズム解明を通し、工学分野でこれまで「問題外」とされてきた地震波動が構造物に与える影響について簡単に述べる。地震に対する社会の靭性等を科学的に論じる上では、いまだ「問題外」視されている高周波や上下動などの影響を「想定外」として無視してよいわけではないことをまず明確に認識しておく必要がある。

  2. 見落とされている地震時の破壊的な鉛直波動とそれによる諸問題について
    前原 博 ((一財)地球システム総合研究所 上席研究員)

    地震時の局地的で強烈な鉛直波動による構造物の破壊現象は、海震で船舶が損壊するのは粗密波であるという、海震についての常識が忘れられている現状に気付かされた事が一つの契機になり、関連事象を見直すことから、現象の存在や問題の輪郭が明確になりつつある課題である。

    この現象は地震計では正確にまだ捉えられておらず、地震現象に関する理解の根源的な事柄から問題が発生しているので、多くの基本的な問題を内在している。そこでフェリー等が受けた海震に関する資料や、震災の体験証言および構造物の破壊事例等について、限られた資料であるが見直して、この問題に起因する諸問題を地震防災の立場から考察する。

    この考察は原子力関連諸施設を始め技術的な分野だけでなく各分野の、地震時の安全性を考える場合の基本的な問題を提起するもので、関係資料の種類と精度を向上さすには、兵庫県南部地震を経験した各施設の管理者と市民の協力が不可欠になっている。

(都市安全研究センター)