大学で労働法の講義をするときには、労働法上のルールは、憲法を頂点として、法律、労働協約、就業規則、労働契約により構成されると説明する。つまり、就業規則は、多くの労働法上のルールの中の一つにすぎない。しかし、労働の現場においては、就業規則が最も中心的なルールとなっている。そして、就業規則の規定をどのように整備し、運用していくかが労務管理の担当者にとっての最も重要な仕事の一つとなっている。現実の労働紛争においても、圧倒的に多くは、就業規則の規定の解釈や適用方法をめぐって起こっている。
このように就業規則は現実に重要性をもつものの、これまでの労働法の専門書をみると、現実の就業規則の規定内容を意識して書かれたものはほとんどなかった。専門書では、法律や判例の内容を理論的に分析し、その解釈の仕方について解説することに主眼が置かれていたからである。
本書は、従来の専門書のスタイルとは全く異なり、現実の就業規則の規定をとりあげながら、それと関係する法律や判例のルールを概説するという形をとっている。また、重要な判例をとりあげながら、判例においてどのような就業規則の規定が争点となり、それについて裁判所はどのように判断をしているのか、という点についても説明し解説を加えている。こうして、就業規則を素材としながら、「生きた労働法」を解説するのが本書のねらいである。
(大学院法学研究科教授・大内伸哉)
