初めて労働法を学ぶ人に、できるだけわかりやすく労働法のルールを伝えたい。 これが、私が本書を執筆した動機です。労働法に関するルールは、ごく初歩的なことであっても、 高校生までの間に教わることはまずないと思います (公民の教科書に少し出てくる程度です)。また、大学に入っても、 法学部に入らなければ、あえて他学部科目として聴講するようなことがなければ、労働法を学ぶ機会はないでしょうし、 法学部に入っても、労働法は必修でないところがほとんどなので、みんなが学ぶわけではありません。
でも、 みんないつかは働くことになるのです。大学生の多くはすでにアルバイト経験があるでしょう。そのときから、労働法が関係してきます。 大学を卒業して就職すると、もちろん労働法が関係してきます。
雇用社会に出て行く前に、 まずその社会の基本ルールである労働法を知っておくことは、 車を運転する前には交通ルールを知っておかなければならないというのと同じようなことです。何も知らないで働き始めるのは、 無免許運転と同じくらいリスクの大きいことと思ってもらいたいのです。
私は、ある女子大 (法学部がないところ) で、 労働法を10年以上教えています。そこでの教え方は、法学部で教える労働法とはまったく違います。 民法の特別法としての労働法を講義する、というようなことではありません。法学の素養や法学的思考をまったくもっていないけど、 バイト経験はあるという学生を相手に、労働法を知識として教えるのです。大事なことは、彼女たちにとってのわかりやすさです。 いくら正確に説明しても、彼女たちの心に響かなければ理解してもらえません。知識を詰め込もうとしても、嫌がられます。 彼女たちにとって、自分で考えて理解してみたい、と思わせなければなりません。知識というのは、 そのような主体的・能動的な姿勢がなければ身に付かないものです。
このようにして積み上げてきた経験を活かして、 法学の知識のない人向けに書いてみたのが本書です。本書は、働き始める前にまず読んでほしいのですが、 すでに働きはじめていて「無免許運転」している人にも是非手にとって読んでもらいたいと思っています。
