近代日中関係の旋回 ―「民族国家」の軛を超えて

本書は「中国革命支援」と「中国侵略」という二つの歴史の側面によって分断された歴史観を乗り越え、まず、いくつかのこれまであまり注目されていなかった日中関係の歴史の場面を再現し、その節目節目に、清国の外交官、革命派、日本政府、軍、民間人、大陸浪人などが各々どのような考えに基づいて互いに観察、接近または疎外したのかを検証する。

次に、このような検証を通じて、その接近と疎外を貫く共通の理念と思想的関連を見出し、そしてこの共通理念と思想的関連がその後の日中関係にいかなるインパクトを与えたのかを分析する。

最後に、戦後の日本人と中国人による相互認識が変容するプロセスを整理し、日中関係が歴史上の接近と疎外を促した共通の理念と思想的連関から脱出したかどうかを分析し、またその原因の究明に務める。

(本書「序言」より)

 

目次

序言
第1章 ライバルから手本へ ―清国ムスリム公使の対日外交―
第2章 東アジアにおける「民族」と「民族国家」の思想 ―近代国家思想の誕生と歴史の連鎖―
第3章 「民族国家」中国を目指して ―辛亥革命と黒龍会―
第4章 「王道」の「アジア」 ―「人類と自然との契約」に基づく東アジアの「共同知」―
第5章 民族国家の壁を乗り越えられなかった「回教圏」 ―「回教工作」と大陸進出―
第6章 歴史の「記憶」と「忘却」 ―高碕達之助とLT貿易の時代―
第7章 「周辺」の焦燥とナショナリズムの内面化 ―21世紀の日中関係―
終章 「師」から「敵」への旋回 ―「民族国家」の衝突―

 

(国際文化学研究科・教授 王柯)