『神戸・阪神間の古代史』

『神戸・阪神間の古代史』

神戸・阪神間の地域は、比較的新しいまちで成り立ち、その歴史文化はそう古くないと考えられがちである。これは外部の人だけでなく、地域内の一部の人びとの間にも広がっているイメージである。しかし神戸・阪神間の一帯は、古代王権の都のおかれた河内や大和に近く、そこから大陸諸国や西国に向かう交通路の要衝の地にあたる。とくに7世紀代のある時期以降、ここは大王 (天皇) を中心とした直轄地 (聖域) を意味する「畿内」という国土区分システムの、もっとも西端に組み込まれた。そのため古代の時代から、政権中枢部の動きと複雑にからみ合った豊かな歴史をもち、その関連史料も比較的多く残されている。

そこで日頃から共同研究をおこなっている文献史研究者と考古学者が、この地域の伝承や神話、六国史の記事、さらには考古学遺物 (遺構) にスポットをあて、神戸・阪神間の古代史について、最新の研究水準にもとづいた考察成果を書き上げたのが本書である。8名の執筆者が、自分の専門分野や興味によって研究したテーマについて、何度か集まって議論を重ねた。それをうけて各自がまとめたものを、合わせて30本以上の論考として示し、4つの地域別の章に分けて紹介した。主な論考は、以下の通りである。

神戸と芦屋

「神戸・阪神間のミナトと海人」「浜辺の美女伝承と神祭り」「生田神社と長田神社」「神戸 ・阪神間の災害と古代国家」

六甲山と有馬

「六甲山中で見つかった銅鐸」「信仰の山、六甲山」「古代の湯治と有馬行幸」「神戸・阪神 間を往き来する巡礼者」

第3章 尼崎から猪名川をさかのぼって

「王族の住まう地域、尼崎」「尼崎の長渚崎と生島」「行基と伊丹」「多田院と河辺郡大神郷 ・楊津郷」

第4章 西宮から武庫川流域へ

「武庫海と西宮」「広田国と広田神社」「武庫川と猪名川の女神の争い」「摂津の羽束国」

第5章 総論

「東神戸・阪神間の古墳論」「倭王権と西摂」「律令制下の神戸・阪神間と人々の生活」

(人文学研究科特命准教授・坂江渉)