『行政学』

『行政学』

「行政は森羅万象におよぶ」といわれることがあります。実際、皆さんの周りにあるあらゆるものに、行政による規制や補助が及んでいます。そしてその担い手である官僚の悪口を耳にしない日もありません。一方では、官僚主導としてその役割の大きさを批判され、他方では、お役所仕事としてその非効率性や硬直性を批判されてばかりです。

これほど現代社会で重要な役割を果たしているのに、これほど評判が悪いというのは、一体どのような仕組み、一体どのような人たちなのだろうか。批判ばかりしているだけでよいのだろうか。私が長らく関心を持ってきたのは、こういった問題です。

この本は、そうした問題に答えようとする学問、すなわち行政学についての教科書です。現代の日本の行政を、過去との比較、他国との比較の中に位置づけること、その現状を理解するために、「分業」と「委任」という理論枠組を用いて説明を与えること、これら二つの目標に向けて、豊富なデータと最新の研究成果を盛り込みました。地方から国際に及ぶ広がりの中で、一方では政治との関係を考え、他方では組織の内部に入り込み、そして行政活動の結果としての政策についても考えていく、そうした本になっています。

この本を通じて、行政の広さと複雑さを知ってほしいと思います。そしてそうした広さと複雑さに取り 組むところにこそ、行政学という学問の面白さがあることも知ってほしいと思います。そして読者の皆さんが、本書を片手に、今後の日本の行政のあり方を考えていくことを、心から期待しています。

 

(法学研究科 教授・曽我 謙悟)

2013年2月12日