『海藻 海の森のふしぎ』

『海藻 海の森のふしぎ』 

「日本人ほど海藻類を広く利用し、親しんでいる国民はいない」とよく言われる。実際、ワカメやコンブは古事記や万葉集の昔からさまざまな文書に記されており、また各地で食用とされている海藻類は数十種を超えるなど、日本人にとっては古くからなじみ深いものであり、広く利用されてきた。また、これらの海藻類が作る「海の森」は多くの海洋動物のすみかや餌を提供することで、豊かな沿岸の生態系をささえており、われわれはおいしい魚や貝という形での恩恵も受けている。しかしその一方で、陸上の植物や動物と比べると、海藻類はまだまだ知らないことの多い生き物であろう。なかでも海藻類の生物多様性や暮らしぶりについては、一般にはほとんど知られていないと行っても良いのではないだろうか。

本書は海藻類の標本を用いたアーティスティックなグラビアや海中景観写真をメインに海藻類のもつ形のおもしろさや美しさを紹介するとともに、その生態や多様性を理解するための基礎的な知識や関連する話題を、解説や研究者の寄稿という形で提供している。その中で、神戸大学関連としては、内海域機能教育研究センター(現 内海域環境教育研究センター)が1996年に編纂・配付した「瀬戸内海海藻類標本集」が紹介されており、また筆者はコンブ類の進化研究に関わる小稿を寄稿した。

 

(自然科学系先端融合研究環 内海域環境教育研究センター・教授 川井浩史)

2013年6月12日