A Mathematician's Year in Japan

本書は数学者 J.D.ハムキンズ教授が日本学術振興会 (JSPS) の外国人特別研究員として神戸大学で過ごした1998年1月から12月までの1年間の滞在記である。ハムキンズ教授は1988年にカリフォルニア工科大学を卒業後、1994年にカリフォルニア州立大学バークレー校で Ph.D. を取得、現在はニューヨーク市立大学の教授であり、数学基礎論、特に集合論の非常に著名な研究者である。本書はブログも SNS も一般的ではなかった当時、まだ学位を取得して間もないハムキンズ教授がアメリカの友人達に日本滞在中に感じたこと、考えたことを書き送っていた電子メールをまとめたものである。ハムキンズ教授自身が書いているように当時と現在では日本も海外もかなり状況が違うし、ハムキンズ教授自身の考え方や感じ方も変わっているであろう。しかし本書は、18年前にアメリカから来た若手数学者が日本で何に興味を持ち、戸惑い、喜び、どのように考えたのかを誠実に語った興味深い記録であり、学生の雰囲気やイノシシが徘徊する様子など、今も変わらぬ神戸大学の気風や環境を世界に伝えるものでもある。また、故角田譲名誉教授や当時工学部長であった北村新三名誉教授が登場する本書は、そのときハムキンズ教授や神戸大学の先生方と同じ時間を共有する機会に恵まれた私個人にとっては、忘れがたい物語にあふれた古く懐かしいアルバムである。

(システム情報学研究科・教授 菊池 誠)


著: ニューヨーク市立大学・教授(元 神戸大学・JSPS 外国人特別研究員)Joel David Hamkins