【Professor~神大の流儀~Vol.1】経営学研究科・金井壽宏教授(後編)

2017年11月02日

経営学研究科・金井壽宏先生へのインタビュー、前編では金井先生がどのような研究をされているのかをお聞きしました。後編では、金井先生が経営学を志したきっかけや、私生活のことなどをお聞きします!
(※前編はこちら→【Professor~神大の流儀~Vol.1】経営学研究科・金井壽宏教授(前編)


—金井先生が、経営学を研究しようと思われたきっかけは何でしょうか。

もともと京都大学の教育学部に入る前とか入った後、最初の2、3年は、ずっと精神分析とか臨床心理学とかに興味があって、そっちの研究をやろうと思っていたんですけど、やがて、経営学の中に「組織の中の人間行動」という科目があることが分かって。その中心トピックは人々のやる気、仕事の世界では仕事意欲、つまり、ワーク・モティベーションと、キャリアと、リーダーシップと組織変革なんですけど、それは社会学も絡むけども、おおもとは圧倒的に心理学なんですね。そういうところに興味を持ったのがきっかけかな。

モティベーションはそのときどきのやる気のアップダウンが問題となり、変動がデイリーにも、また1週間を振り返っても、やる気が高かった日と、さえなかった日があったりするでしょう。ですから、やる気のアップダウンを自分で自己調整できるようになるために、モティベーションの理論を学び、それを元に、自分のやる気の自己調整をするための軸を、自分のモティベーションの持論としてもてば、いうことないです。さらに同様に、リーダーシップについても、軸となるような自分なりのリーダーシップ持論を、自分の言葉で言語化することも有益だと信じています。

—経営学を全く知らない人の中には、「経営学はお金儲けのための学問だ」というイメージが少なからずあると思うのですが、金井先生はそれについてどのように考えておられますか。

経営学というと、お金儲けのための学問みたいに思われることも確かにあるんですけど、そうではなくて、注目すべき点は、実践に密接した応用学問分野であり、そうであるだけに実は、しっかりした経営学の大家のなかには、たとえば、モティベーションやキャリアの学者なら、心理学のような基礎学問分野に敬意を払っていますし、経済学の応用をしながら、アプローチしている人は、当然、基礎学問分野としては、経済学者に敬意を払っています。例えば、コーポーレートファイナンス(企業財務)の教授などもそうですね。

経営学全体だと広すぎるから、ひとりひとりが、自分の領域を持っています。わたしの場合なら、「組織の中の人間行動」、組織行動論というのが自分のフィールドです。工学系の人も理学系の人も、あるいはお医者さんもね、組織やチームでやらなきゃできないことってたくさんあるので、「誰もの問題としての組織論や組織のなかの人間行動論」みたいな分野があって良いのかなとずっと思っていますし、その分野の発展を望み、それに寄与したいと思って、これまでもやってきました。

ちなみに、神戸大学の名誉教授で、いまは、甲南大学教授の加護野忠男先生から教えてもらったのですが、経営という言葉の語源というか、そのルーツをしっかり理解するのが大切なようです。経営の「経」は緯度経度という言葉のなかに「経」という言葉が使われているように線とか糸のイメージだそうです。「営」の方は、法学部の講義もとった人ならご存じの「造営物管理」という言葉にもあるとおり、建物を作るという意味合いがあります。で、この「経(糸)」と両方をくっつけると、ここは俺の土地だからそこに何か建てるぞっていう感じかな。それの抽象的な、ビジネスでそれを作っていくっていうのが「経営」なんですね。

その経営の分野で学んでいる独自の言葉だとかコンセプトだとか、また、経営学のなかの組織行動論の核となる概念のひとつひとつ、モティベーション、キャリア、リーダーシップ、組織変革・組織開発などの主要概念について、学生さんや実務家の皆さんとしっかり議論をさせてもらいながら、経営学のなか理論の一部が、その理論にふれた方々の生き方、働き方、人との接し方に実践的に使えると思ってくださる方に出会えたときは、いつも嬉しいです。

—ここまで研究のお話をお聞きしてきたのですが、ふだん金井先生がどういった生活をされているのか、私生活のことをお聞きしてもよろしいでしょうか?

わたしが毎日必ず日課としてやってることはね、1時間のウォーキングです。かなり早歩きで歩くと1日2万歩まで歩いている日もけっこうありました。さすがに、63歳の今はもうそろそろ万歩計という言葉どおり、日々、1万歩ぐらいで良いかなと思いかけています。それでも、歩数の多い日、つまり昼間に1時間、加えて夜にもキャンパス内をウォーキングした日には、17,000歩以上歩いている日が、毎週、半分ぐらいあります。

ウォーキングは趣味というよりも、健康管理でもあるのですが、長い間の趣味としては、楽器もとても好きなので、家の一室を防音室にして、そこにキーボードと、ウォーリックのベースギターと、フェンダーやギブソンの電気ギター、ヤマハの絶品ともいうべきデジタルのフルドラムセットも置いています。ヤマハの常務(当時)の和智さんと親しい時期があったのですが、そういうご縁もあり、1家に1台のドラムセットがあって良いと思うぐらい、マーケティングをヤマハさんもなさったらと、お伝えしたこともあります。ちょっと言い過ぎかな(笑)。でも、和智さんに教わったことですが、バリー・ビットマンという米国の医者の研究で、リズムを刻むことと、免疫力で測定される健康とが相関があるというデータもあがっているそうです。その後、フォローアップの研究がどのようになっているのかは知りませんが。

—ありがとうございました。最後に神大生へのメッセージをお願いします。

地に足が着いた形で大きな志を実行に移してほしいと思います。ただ大きすぎて最初の一歩が出ないと困るので、「こういう歩み方をし始めたら、あの遠くへ近づく一歩になるんだ」と思えるような、最初の一歩が踏み出せるような人生のシナリオ、しかし、そうとう遠くまで行けそうだというスケールの大きな発想を実現するようなステップをしっかり構想してみてほしいです。そして、それを歩み始めてほしいです。自分が学生から社会人になる時にどんな働き方や生き方をしたいかというのは、最初は分からないと思うので、今働いてる身近な人、たとえば、両親とも働いておられるなら、お父さん、お母さんの生き方、働き方を参考にしながら、また、他方で、経営者が自分のキャリアや人生の全体を振り返るような書籍もたくさんあるし、日経新聞の「わたしの履歴書」というコラムや、その連載から生まれた書籍などを読まれるのも、長い仕事生活を意味付けるキャリアのストーリを学ぶうえで、とても有益です。

それから大学をうまく使って欲しいと思います。学部の学生さんは、「先生の研究室へ行っても良いですか」みたいなことをあんまり質問されなくなっています。遠慮なく、関心、興味をもった先生へは、講義の場で質問するだけでなく、アポをとって、研究室で20分でも30分でも面談してみてください。大きなクラスで質問する以上に、親身に深い議論が実現する可能性が多いにありえます。「〇〇について、ほんの15分でも20分でも良いのですけれど研究室にお邪魔できませんか。」「直接にお伺いしたい質問があり、議論もさせていただきたく思っております」とか、訪ね方は一工夫いりますが、講義をとっている間に、よく質問して、名前と顔を覚えてもらうというのもよいステップになります。

また、「卒業論文にも関わることなので」って先生に言ってみて。「15分でも20分でも」とお願いして個人的に面談、ディスカッションさせてもらうことの良い点はね、学者はもともとお喋りやから、15分か20分でOKって言ってても、そのアポのあとの時間に余裕があって、全体として1時間空いてたら、約束の時間を大幅に上回って、1時間喋ってくれることもあるわけです。最初から1時間の研究室アポは難しくても、話し始めたら、熱心かつよい質問をし、議論も冴えていると思ったら、教員の側も「あ、君あと2分やで」とか言わないですよ(笑)。そうやって、その分野で20年30年も、自分も関心を持つテーマで研究と教育をやっている人に直接コンタクトとって、研究室で学ぶのは、とても意味のあることで、ひょっとしたら生涯の思い出となるかもしれないぐらいやないかなと思います。

◯取材を担当した学生のコメント
藤田 奈菜子(取材担当・経営学部2年):
経営学部生の一人として、今回のインタビューで金井教授から多くのことを学ぶことができました。金井教授は有名で偉大な教授であるにもかかわらず、とても気さくな方でした。神大の経営学部で学んでいることにもっと誇りを持って、勉学に取り組みたいと思いました。

柴田 雅史(取材担当・経営学部2年):
教授から少人数でお話を聞くことができ、とてもうれしく思います。教授の経験からくるエピソードや考えは、とても深いものであり、神戸大学生の1人として貴重な経験をさせていただいたと思っています。

三島 春香(カメラ担当・経営学部2年):
今回、金井壽宏教授のお話を伺う機会をいただけてとても嬉しく思っています。記事の形ではまとめきれないユニークなエピソードもたくさんしてくださり、神戸大学の経営学部で学ぶ意味を見い出すことができました。

(学生広報チーム・広報課)