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シンポ「ジェンダーとHIV/AIDS」が開かれました

シンポジウム

神戸大学国際協力研究科で10月22日、シンポジウム「ジェンダーとHIV/AIDS 〜今、世界で何が起こっているか」が開催され、約65人の参加者が講義を聞き、講師との議論を通じてHIV/AIDS問題に対する理解を深めました。本シンポジウムは、神戸大学研究教育活性化支援プロジェクトの一部として開講されている「海外実習」の一環として、11月にタイ北部で挙行される「エイズ・スタディツアー」の事前研修をかねています。国際協力研究科の英語コースの学生の参加も可能にするため、シンポジウムには同時通訳が付きました。本報告は、それぞれのセッションの内容の概要を紹介するもので、タイに行く予定の院生がまとめたものです。

(国際協力研究科教授 ロニー・アレキサンダー)

第一部 ジェンダーの視点からHIV/AIDSを考える

1.

「世界のHIV/AIDSの現状と課題」

池上清子 (国連人口基金東京事務所所長)

「世界のHIV/AIDSの現状と課題」について発表され、導入部としてはリプロダクティブ・ヘルスの言葉の定義から始まった。リプロダクティブ・ヘルスにおいてよく取り上げられる活動について参加者の知っている事柄を聞くなど、参加者とのやり取り形式で進行した。ジェンダーの視点からHIV/AIDSを見てみると、その感染者の層が変化してきていることが分かる。世界的に見て、これまで中産階級の男性の感染が多かったが、近年女性の感染が増加している。また国別に見た中で日本は、先進国の中で昨年、唯一感染者が増加している国である。

今後の考えるべき課題として挙げられる点は以下の3点ある。

  1. 女性の身体的、精神的、社会的なWell-beingは、いろいろな社会で保障されているか?
  2. 貧困と関連するが、世界各地の健康状態の違いは受け入れられるべき事柄なのか?
  3. ジェンダー視点に立って、FGM/FGC、フィスチュラへの対応などの社会的慣習やHIV/AIDSなどのプログラムは公平、平等であると言えるのか?
(文責: 田寺亜希子)

2.

「ジェンダーとHIV/AIDS 〜セックスワーカー当事者の運動から見る〜」

水島 希 (東京大学情報学環交流研究員)

労働としての売買春全般を「セックスワーク」、そこで働く人を「セックスワーカー」と呼ぶ。

アジア太平洋地域において、HIV感染の拡大が深刻化するなか、「セックスワーカー」は、薬物静注射などのドラッグユーザーとともに、HIV感染拡大の原因とみなされてきた。

コンドームを使用する店舗は取締りの対象としないという「100%コンドーム使用政策 (CUP) 」。健康な成人を対象とした、エイズ治療薬「テノフォビル」治験。米ブッシュ政権による「反売春政策」など、新規HIVポジティブ者の人数を減らそうとする方法が果たして効果的なのだろうか。さまざまな予防プログラム、政策に対し、セックスワーカー当事者の視点から疑問を投げかける。

実施の仕方によっては、当事者をさらに困難な状況下に追い込むことにもなりかねない。私たちは、人権・社会的に弱い立場にあるという脆弱性の低減、コントロールではなくエンパワーメント、という視点から、セックスワーカーを取り巻くHIV/AIDS問題を捉えていく必要があるのではないか。

(文責: 菊池優衣)

第二部 HIV/AIDSは今 〜ポストICAAP (エイズ国際会議) の課題

1.

「公衆衛生とエイズ: 行政にできること、できないこと」

白井千香 (神戸市兵庫区保険福祉部 主幹)

神戸市兵庫区保険福祉部の白井千香氏には、神戸の現状と、行政にできること、できないことについて主に語っていただいた。

それによると、日本のHIV陽性者は年々増え続けており、エイズ問題は今、若者、男性同性間の性的接触 (MSM)、都市部に偏在している。神戸でも同様な傾向で、県内の3分の2が報告されている。また各自治体 (保健所) の公共サービスとして、抗体検査や相談、学校への講師派遣、市民向け啓発パンフレットの配布、感染症情報の提供などがあるが、ターゲットを定めないと、リアリティが欠如して、「自分の問題」とは捉えられなかったり、当事者には届かないサービスになりかねない。今後は性行動によっては感染のリスクにさらされやすい人たちとして若者、MSM、セックスワーカー (CSW) などに認識していただき、感染症の予防として、公衆衛生の立場から新たなアプロ―チが必要である。つまり、保健所や保健センターなど自治体とボランティア、市民団体などNGOの協調が欠かせない。

最後に大事なこととして、地域のネットワーク、協調、パートナーシップを挙げていた。

(文責: 野本まりの)

2.

「若者とエイズ〜コミュニティからの課題」

繁内幸治  (BASE KOBE 代表)

「いつでも、どこでも、誰にでも、できる活動を」という方針のもと設立されたNGOであるBASE KOBEでは、HIV陽性者の交流会や相談、エイズに関する講演会、コンドーム等の配布など、様々な形で予防啓発活動や、感染者に対する支援を行っている。

現在、多くの地域において、エイズに関する予防啓発が進められているが、予防啓発と支援が一体でなければ感染者を追い詰めてしまうだけである。さらに、支援を行う際に問題となってくるのは、支援することそのものが、人々の価値観と衝突する場合である。そこで必要とされるのがNGOであり、NGOが予防・支援のために寛容である社会を持つ国ほど、早く問題解決へと進んでいく。セクシャル・マイノリティからヘテロセクシャル層へ、HIV感染者の移行過程にある、日本においても、NGO、そして社会がどこまで寛容になれるのか、がポイントとなる。今後も、一人でも多くの人にエイズについて知ってもらえるような活動を行っていきたい。

(文責:貝原加奈)

第三部 総合討論 「私たちにはなにができるのか」

池上清子、水島希、白井千香、繁内幸治

Participants exchanged views and discussed ways to deal with the problem of HIV/AIDS.

Ms. Ikegami emphasized the importance of self-control and self-restraint as an effective way to deal with the problem, while not rejecting the individual's freedom in his/her sexual behavior.

Mr. Shigeuchi, director of BASE Kobe , stressed grassroots awareness and the role of NGOs, volunteers and activists in publicizing HIV/AIDS as a serious threat endangering every individual's life nowadays. He stressed on persuasion of the social cooperation and weakening the social prejudice to HIV/AIDS victims.

Ms. Mizushima reminded us that "clean-up" campaigns by local authorities against local and migrant sex-workers leads to the change of sex business into an underground industry. She also emphasized the necessity of involvement of the sex-workers in planning or decision-making in legal, political and social issues related to themselves.

Dr. Shirai pointed out the legal and procedural measures taken by the Japanese government for the prevention and treatment of HIV/AIDS, including considering the HIV/AIDS victims as handicapped and providing pensions for them in order to enable them to afford to pay for the medical treatment expenses. Availability of AIDS-Test is another free-of-charge service provided by the Japanese government.

Among the important points raised in the Panel Discussion were "the increasingly easy access to chemical drugs in Japan" and "HIV/AIDS growing trend in future, particularly among Japanese young people."

Increasing the national budget to prevent HIV/AIDS was put forward as a requirement for success, as well as cooperation among government organization, local NGOs and other organizations and affected individuals.

Conclusion of the Symposium

Professor Ronni Alexander wrapped up the symposium expressing the following concluding remarks, as responses put forward in the symposium, to the question: "What can we do to prevent HIV/AIDS?"

Power Balance in Access to Social Resources.
An equal Gender Balance.
Grassroots participation and the role of education.

In addition, she suggested rather than thinking about People Living With Aids, as is the usual trend, we need to become a Society Living With Aids, where everyone is concerned with prevention and care.

(文責 アリ・アミリ)

第四部 映画「Yesterday Today Tomorrow〜昨日今日そして明日へ……」

(監督・撮影・編集 直井里予)

監督からのメッセージ (http://www.riporipo.com/ytt/message.htmlより)

「タイ北部に位置するパヤオ県。「昨日 今日 そして明日へ・・・」は、丘陵に囲まれた自然豊かな農村に暮らす2家族のHIV感染者たちの生活を、3年間にわたり記録したドキュメンタリー映画です。 生の不安に向き合いながら、今この瞬間を生き続ける感染者たち。この映画では、HIV感染者たちの日常生活を通して、彼らの抱いている思い、喜びや哀しみ、そして人間の生死の有り様を描きました。」

上映会の感想

子どもが病気で苦しむ姿は見ていて大変悲しかったが、その両親の気持ちになると涙が止まらなかった。特異な演出もなく、淡々と事実を描くことで逆に浮き彫りなる現実が心に残った。たいへん良い作品であったと思う。

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