【式辞】平成21年度 入学式式辞

2009年4月7日 神戸ポートアイランドホール

福田秀樹神戸大学長

みなさん、神戸大学入学おめでとうございます。 ご列席いただいております保護者の皆様、本日はまことにおめでたく、 心よりお祝い申し上げます。

さて、この春、神戸大学は学部に2652名、大学院博士課程の前期課程に1293名、 博士後期課程に320名、法科大学院と経営学専門職学位課程に168名、 3年次編入学生として177名の皆さんをお迎えすることができました。 神戸大学長としてこのような多くの新入生をお迎えすることができ、うれしく存じます 。

専門性、創造性、国際性を育む環境

神戸大学は、11の学部と13の大学院、 法学と経営学の2つの専門職大学院、経済経営研究所、 自然科学系先端融合研究環、医学部附属病院、 さらに多くの教育研究に携わるセンター群と複数の図書館で構成されています。

神戸大学は、「真摯・自由・協同」の理念と創設以来育まれてきた国際性豊かな研究の特色を生かしつつ、 大学構成員各人の知的好奇心と探究心に発する研究の水準を高めてきました。 また教育面においても、教員と職員とが一体となって協働し、 学生の視点に立って、学習環境の整備、経済的支援、 さらに「教育力の向上」などに努力して取り組んできました。 その結果、本学における研究は、高度な水準、国際性、総合性という特徴ある要素を有し、 目覚ましい充実が図られ、教育面においても国際的に魅力ある教育を構築するための環境が整備されてきております。 そして、海外の国や地域にある大学や研究機関と日常的に教育研究面で交流を行うとともに、 世界72カ国から1033名の留学生を迎え、国際性豊かな大学として国内外に知られております。

神戸大学は、このように皆さんの専門性、創造性、国際性を育むための充分な環境が整っている大学であります。

「フラッグシップ・プロジェクト」の立ち上げ

さて、現在、我々人類を取り巻く状況は、地球温暖化、 エネルギー資源の枯渇化、食糧や水不足などの環境問題、 異文化衝突による民族間の戦争、貧困など社会的あるいは経済的な問題など、 様々な課題に直面しております。さらに、日本に眼を向ければ、 高齢化や少子化など社会の構造を根本的に揺るがす問題も顕在化しております。 私は、我々人類がこのような困難な課題に対し、 あらゆる「知」を結集し、チャレンジ精神を持って課題の解決に立ち向かうことが 「現在我々に課せられた大きな使命」と考えております。  

このような直面する様々な課題を解決し、 世界中の人々が安心して暮らすことのできる社会をつくるため、 自然環境との共生を重視した「持続可能な社会」を構築することが重要な課題のひとつであると考えております。 そのため、「持続可能なグリーンで安全・安心な地球環境を構築」 するための新たなプロジェクトを神戸大学の「フラッグシップ・プロジェクト」として立ち上げる決意をしております。 そして、神戸大学の特徴である「総合力」を駆使して学術分野の連携を強化し、 課題の解決のために積極的に推進していきたいと思っております。

オール神戸の総合力で

神戸大学では、人文・人間科学系、社会科学系、自然科学系、 及び生命・医学系の4つの学術分野があり、個々の分野における教育研究を進化 ・発展させていくことは勿論のこと、 これらの分野間の強固な連携による融合領域における教育研究を推進することによって、 新しい学際分野において多くの成果を輩出しています。

このような学術分野において、自然科学系では、地球温暖化防止策を目的として、 炭酸ガスの増加を抑制するため化石資源をできるだけ使用しないで、植物資源を利用し 「脱化石資源社会の構築」を目指す研究を行っているグループや、太陽エネルギーの利用において、 従来の変換効率を凌駕した「次世代の太陽電池」の研究開発を行っている研究グループがあります。 また、世界最速といわれる「次世代のスーパーコンピューター」が約2年後に神戸のポートアイランドに設置されますが、 神戸大学では次世代のスーパーコンピューターを駆使できる人材の育成や基礎的な研究を推進するための「新しい研究科」 を設立するよう計画を進めております。 このような世界最先端の技術もこのプロジェクトに大いに貢献できるものと期待しております。

そして、健康科学分野では、産学官の連携を通して、疾患予知診断技術の開発や最先端治療システム、 看護・介護作業や環境を支援するシステムの構築により、 安心して暮らせる生活環境を可能にする技術開発に取り組んでいる自然科学系及び生命・医学系のグループもあります。

一方、環境調和型の持続的成長社会を目指すために、 「環境技術や環境政策面のマネージメント」を研究する社会科学系の専門グループは、 将来像を目指す社会制度設計を行うために、企業・産業レベルから国家・国際レベルまで多様な階層を含めた幅広い技術開発マネージメントの研究に取り組んでいます。

また、社会や環境への影響を考慮した経済制度の保障、人権の擁護、平和の構築、自然資源の維持、貧困の軽減などを通じて、公正で豊かな未来を造り、「持続可能な開発」の実現を目指している人文・人間科学系のグループもあります。

私は、このような神戸大学の多種多様な分野に携わっておられる専門家を結集し、オール神戸大学の総合力をもって、ひとつの大きな目標である「持続可能なグリーンで安全・安心な地球環境」を構築していきたいと思っております。

「夢」を見つける

さて、最後になりますが、皆さんにお伝えしたいことは、 このような神戸大学の充実した環境下での教育研究を通じて、 多様な価値観を許容し高い倫理観を持つと同時に、大学で身に付けた専門性を活かして、 先程申し上げました多様な課題を解決できる人材になっていただきたいということです。 そのためには、大学生活を送られる間に、是非「自分のやりたいこと」、 あるいは「自分のやるべきこと」を模索しつつ、「夢」を見つけることが重要です。 そして、その「夢」を実現するために大学で充分な基礎力を身につけ、 実社会において貢献して頂くことを期待しております。

平成21年4月7日  
  神戸大学長 福田秀樹