【式辞】平成21年度 博士学位記授与式 式辞

平成22年3月24日 出光佐三記念六甲台講堂

皆さん、博士学位の取得、おめでとうございます。一言、お祝いを申し上げさせていただきます。

知のライセンス

今回、課程博士228名、論文博士31名、の合計259名の方が博士学位を取得されました。 博士の学位は、学術研究において自ら未知の分野にチャレンジし、 新たな知の創造やその成果を世界に発信できる者に対して授与されるライセンスであります。 神戸大学から、このように多くの方々に学位を授与できることを、大変誇りに思っております。

皆さんは、論文の作成や発表のために日夜研究に没頭され、 長年のご努力・ご苦労があったかと思います。その甲斐があって、見事、学位審査に合格され、 本日神戸大学の学位を授与されることとなりました。 さぞかし、喜びもひとしおのことと想像しております。 また、ご指導に当られた指導教員の方々や職員の皆様に、 そのご努力とご尽力に対し心から感謝を申し上げます。

これから皆さんは、大学、研究機関や企業など、それぞれの道に進まれていくことになります。 我が国において博士号を取得される方の人数は、海外からの留学生も含め、 ポスドク研究員や若手研究員の育成を目的とした近年の様々な施策により、著しい増加傾向にあります。 このことは、博士号取得者の活躍できる場が拡大されていくと同時に、研究者の流動化が促進され、 個々人の能力に対してもグローバルな世界的競争が激しさを増すことにつながります。

「新たなパラダイムの創造」を

さて、現代社会の状況を見ますと、18世紀イギリスで産業革命が起って以来、科学技術という 「知の創造から応用」に至る急激な発展は、人類の営みに明るい光をもたらす反面で影を生み、 地球環境の破壊や資源の急速な消耗に象徴されるさまざまな問題が顕在化し、 深刻な事態となってきていることは、みなさんも御承知のことと存じます。

このような「未知の地球環境」に直面する現在において、人類が永遠に繁栄し存続するためには、 複雑な変化に適切に対応し克服していかねばならないことは、「生物の繁栄と滅亡の歴史」を振り返ると明らかであります。 皆さんは、今日のグローバル時代における競争的環境に惑わされることなく、「何を研究すべきか」を深く考え、 挑戦的に課題解決に取り組んでいただきたいと思っております。

科学技術の発展という観点から俯瞰すると、持続可能な人類社会の構築は、 資源・エネルギー、環境、食糧など地球の有限性からくる科学技術体系の根本的な転換なくして、 実現が困難であると思います。この自然生態系を考慮した「新たなパラダイム」の創造は、 あらゆる学術分野間の連携や融合によって生みだされ、従来の枠組みをこえた創造的な展開が要求されます。

神戸の教育・研究に自信を持って

ところで、神戸大学は、世界最高水準の研究と人間性、創造性、国際性、専門性を培う教育を目指し、 たゆまない営為を重ねてきました。このような努力の結果として、 世界的に多くの優れた研究者やグループが存在し、優れた成果を創出してまいりました。 皆さんは、神戸大学が有する「高い文化的な香り」の中で、 世界に誇れる恵まれた教育・研究の場で、研究のみならず成長過程における人間形成など、 多様な経験を積み重ね研鑽されてこられましたので、高い専門知識や立派な人格などを身につけられておられると思います。

神戸大学の大きな特徴は、人文・人間科学、社会科学、自然科学、 生命・医学系の4大学術系列が、他分野との学際的な教育や研究を推進し、 あるいは人的な交流も推進できる雰囲気にあることです。皆さんはこの中におられたことから、 科学および社会が必要とする幅の広いご見識を培われ、 先程、申し上げました「新たなパラダイムの創造」の重要性も理解いただけるものと思います。

皆さんは本日、神戸大学の博士の学位を取得され、世界の学術研究者の仲間入りをされた訳です。自信を持って、 21世紀の課題である「持続可能な社会の構築」を目指し、 人類と自然の共生と調和を基本に据えた新たな世界の創造に尽力されますことを期待しております。  

みなさんの今後のますますのご活躍を祈念して、博士学位取得のお祝いの言葉といたします。

平成22年3月24日  
  神戸大学長 福田秀樹