【式辞】平成23年度 入学式式辞

2011年4月6日 神戸ワールド記念ホール

みなさん神戸大学入学おめでとうございます。ご列席いただいております保護者の皆様、本日はまことにおめでたく、心よりお祝い申し上げます。

さて、この春、神戸大学は学部に2661名、大学院博士課程の前期課程に1283名、博士後期課程に312名、法科大学院と経営学専門職学位課程に154名、3年次編入学生として151名の皆さんをお迎えすることができました。

神戸大学長としてこのように多くの新入生をお迎えすることができ嬉しく存じます。

神戸は海と山、そして豊かな自然環境に恵まれ、世界の異なる文化を受け入れながら、比類のない文化・気風を形成してまいりました。そして、20世紀の百年間、開港都市としての機能を充分に発揮し、日本の近代化を先導してきた国際都市です。

そのような文化の香りが漂う環境に抱かれた神戸大学は、11の学部と14の大学院、法学と経営学の二つの専門職大学院、経済経営研究所、自然科学系先端融合研究環、医学部附属病院、さらに多くの教育研究に携わるセンター群と複数の図書館で構成された総合大学です。教員および職員の総数は、それぞれ約1500名および約1600名、そして学生数は、学部と大学院生合わせて16000名を超える大きな規模を誇る全国有数の大学です。

神戸大学は、「真摯・自由・協同」の理念と創設以来育まれてきた国際性豊かな研究の特色を生かしつつ、大学構成員各人の知的好奇心と探究心に発する研究の水準を高めてきました。

また教育面においても、教員と職員とが一体となって協働し、学生の視点に立って、教育力の向上、学習環境の整備、経済的支援、などに努力して取り組み、魅力ある教育を実施する環境も整備してきました。その結果、神戸大学は、研究および教育のいずれにおいても世界的に卓越した総合大学として発展しています。

神戸大学における学術分野を大きく分けますと、人文・人間科学系、社会科学系、自然科学系および生命・医学系の四つの学術系列に区分出来ます。いずれの系列に属する学部・研究科においても優れた特色を有し、それぞれの分野において世界的に高い評価を得ている部局がそろっております。

神戸大学の特徴としては、何よりも国際性を挙げることができます。神戸大学は、海外の46ヶ国や地域にある204もの大学や研究機関と日常的に学術・文化の面で交流を行っており、教員の海外派遣及び海外からの招聘、そして75カ国におよぶ国から1100名を超える留学生を受け入れています。このように、神戸大学は大変国際性の香り高い雰囲気を持つ大学です。

私は、神戸大学の国際化を一層推進するために、次の三つのグローバル戦略を考えております。

まず一つ目のグローバル戦略は、神戸大学で学ばれた留学生の方々を中心とした世界各国での海外同窓会を設立し、国際的な人的ネットワークを構築することです。

海外同窓会は、1989年の韓国同窓会の設立以来、台湾、中国、ベトナム、インドネシア、タイ、マレーシア、シンガポールのアジア地域八カ国と、本年3月にベルギー・ブリュッセルに欧州同窓会を設立しました。今後、北米をはじめ、他の地域での同窓会の設立を目指すつもりです。

二つ目は、コアとなる複数の地域において拠点としての事務所を設置し、国際的多極ネットワークを構築することです。

拠点事務所については、まずアジア地域として、中国の北京に設置いたしま した。そして、昨年9月に、ヨーロッパ地域として、EUの首都ともいうべきブリュッセルに神戸大学として、二つ目の事務所を設置致しました。

また、本年3月には「神戸大学ブリュッセルオフィス」のオープニング記念シンポジウムの開催を実施してまいりましたが、本シンポジウムでは、人文・人間科学系、社会科学系、自然科学系、生命・医学系の神戸大学における全学術分野の研究者が一堂に集まり、分野ごとのセッションにてベルギーの主要な大学との国際シンポジウムを開催しました。  

この記念シンポジウムに先立ち、神戸大学のヨーロッパとの学術交流の進展に大きな貢献をいただきましたEU大統領のヘルマン・ヴァン・ロンプイ氏に対し、神戸大学の名誉博士号を授与させていただきました。そして、大統領からは、次のとおり力強いお言葉を賜りました。

「日本の大学がブリュッセルに事務所を開設されたのは最初であって、日本とEUの二つの社会をつなぐあらゆる糸を結ぶ、新たな強い結び目であり、大変感謝しています。」との歓迎のお言葉を賜り、大変感銘を受けました。

三つ目は、世界の主要な大学との学術や学生の交流を拡大することです。

神戸大学では、従来より、アジア、北米、大洋州、欧州など世界中の主要な87の大学と大学間交流協定を締結してきました。

最近では、この3月に英国のオックスフォード大学と大学間の学術交流協定を締結し、オックスフォード大学の学生12名を神戸大学文学部で毎年受け入れ、本学の学生とともに学業に従事することになっております。

このように世界各国に開設された多くの同窓会やオフィスあるいは大学間の協定などを利用したグローバルネットワークをベースにして、多様な国々との国際的な交流を深めることができますので、今後、皆さんには是非とも積極的にご活用していただきたいと思います。

神戸大学のもう一つの大きな特徴は、「総合性」にあると思います。

神戸大学では、多くの分野を融合した学際的研究を発展させるために、現在理化学研究所がポートアイランドに建設中の「京」という愛称で呼ばれている「次世代スーパーコンピュータ」に隣接した場所に、「神戸大学統合研究拠点」を建設致しました。

本拠点は神戸大学の総合性を生かし、神戸大学の多くの自然科学系の専門分野の方々が多様なプロジェクトを形成しておられ、国内のみならず、最先端の研究を行っている海外の大学、研究機関や企業などの研究グループとの連携を図るための拠点として発展させてゆく計画です。

また、神戸大学は本拠点に連結した国際コンベンションホールを建設中で、本ホールは研究成果の発信を目指した国際会議や学会などの学術交流の “場 ”としての機能を有しております。

このように、統合研究拠点とコンベンションホールの建設、および次世代スーパーコンピュータや近隣の大学との連携を図ることによって、“知 ”の集積が期待されます。

ところで、話は変わりますが、ここで、東北地方太平洋沖地震に対する神戸大学の取り組みについてお話をしたいと思います。

この3月11日、東北・三陸沖を震源とする国内観測史上最大のマグニチュード 9.0の極めて強い「東北地方太平洋沖地震」が起き、地震と大津波、さらに福島の原子力発電所事故による甚大な被害を受け、その惨状に言葉を失うほどの衝撃を受けられたことは、皆さんもよくご存知のことと思います。

被害は甚大な規模となり、国を挙げて復旧・復興へ必死の努力が行われていますが、物質的、人的など多くの支援が求められています。

神戸大学は、16年前に発生した阪神・淡路大震災の被害を受けましたが、直後、この体験を生かして「防災」と「減災」に立脚した、安全・安心な社会の構築を目指す仕組みや手法の研究を推進するための「都市安全研究センター」を設置致しました。

今回の大震災に関しては、本センターおよび医学部の災害医療チームの派遣を行うと同時に、被災された方々の生活・住宅復興支援をはじめ、長期的な日本の防災・減災についての研究を実施する予定です。

また、海事科学部が所有する練習船「深江丸」は、阪神・淡路大震災時には、物資の輸送、被災者の輸送、あるいは船上での医療・治療を実施するなどの積極的な活動を行いましたが、今回の震災に対しても、国や自治体などからの要請があれば、迅速に活動ができるよう準備をしております。

そして、放射線の分析や復旧工事に関する技術者の派遣も行うことにしております。

それ以外にも、神戸大学としての義援金の募金や東北地方への生活物資の輸送をはじめ、被災された地域の学生や大型実験設備の受け入れ準備など、大震災を経験した神戸大学として、最大限の支援・サポートを行っておりますが、今後、長期間に及ぶ支援が必要と考えられますので、継続して支援を行い、一日も早く復旧されますことを願っております。

さて、本日の式典では、滋賀県立大学名誉教授で、現在、石川県立歴史博物館長の脇田晴子 (わきた はるこ) 先生をお迎えしております。

脇田晴子先生は、昭和31年3月に本学の文学部を卒業された皆様にとって大先輩でおられます。

先生は、今まで多くの要職を務められ、この間での素晴らしい御業績に対して、多くの賞を受賞されました。代表的なものとして、平成17年には、文化功労者、昨年平成22年11月には文化勲章を受賞されましたが、この平成23年度の入学式の貴重な機会に、先生から「人間みな平等 人種・男女・貧富・身分」というテーマで、御講演をいただくことになりました。

脇田先生のご紹介は後ほど、釜谷人文学研究科長・文学部長がいたしますので是非ご期待頂きたいと思います。

最後になりますが、現代の世界において我々人類は、先程から申し上げましたような、想定をはるかに超えるような 大災害、その他、地球温暖化、エネルギー資源の枯渇化などの環境問題、異文化衝突による民族間の戦争、中東地域における社会構造の変革などグローバルな規模の多くの課題に直面しております。

みなさんには、この神戸大学の国際性豊かで、開放的な環境下での教育研究を通じて、人類のため多くの困難な課題を解決するために、基礎知識に加えて、自主性、創造性そして何よりもチャレンジする行動力を是非身につけていただくことを要望して、私の式辞とさせていただきます。

平成23年4月6日  
  神戸大学長 福田秀樹