【式辞】平成23年度 学位記授与式 式辞

平成23年度 学位記授与式 式辞

学部を卒業される皆さん、そして大学院前期課程および専門職学位課程を修了される皆さん、卒業並びに修了おめでとうございます。また、ご家族の皆様方、誠におめでとうございます。神戸大学の全構成員を代表して心からお祝い申し上げます。

本日、学部学生の卒業生2,669名、大学院博士前期課程修了者1,260名、並びに法学研究科および経営学研究科の専門職学位課程修了者、合わせて94名の方々に、それぞれ学士および修士の学位を授与いたしました。また、昨日は220名に博士の学位を授与したところです。このように本日多くの卒業生や課程修了者を輩出できましたことに対して、神戸大学として誇りに思っております。そして、みなさんは今、これからそれぞれ新たな道に向かわれ、夢と希望を持って世界に大きく羽ばたこうと、さぞかし胸が高鳴る思いをされておられることと存じます。

ところで、神戸という町は、瀬戸内海と六甲山系とにはさまれた風光明媚な街並みが特徴で、歴史的にみて明治維新以来、アジア諸国や西欧など先進的な異文化との交流を積極的に推進する、比類のない文化を形成し発展してきております。二十世紀の百年間、開港都市としての機能を充分に発揮し、日本の近代化を先導してきた代表的な都市でもあります。

そのような開放的で国際性に富む固有の文化の下、神戸大学は、1902年の創立以来「真摯・自由・共同」の理念を尊重し、世界最高水準の研究並びに人間性、創造性、国際性、専門性を培う教育を目指してたゆまない営為を重ねてまいりました。そして、本年で110周年を迎えます。

本学は今、「神戸大学ビジョン2015」で掲げる「卓越した独自の教育プログラムを通じて、高い見識とグローバルな視野を有する人間性豊かな指導的人材を育成し、世界トップクラスの教育研究機関」を目指しております。

さて、近年、高度でグローバルな人材が社会・経済界から強く要望されており、文化や言語の異なる環境下でコミュニケーション力や困難を乗り越えて目標を達成する力を有する人材を育成することが大学の重要な使命の一つとなってきております。グローバル人材の育成のための一手段として、最近話題となっております「秋入学」について多くの大学において検討されていることは皆様もご承知かと思います。神戸大学では、グローバル人材の育成に対しては、既に数々の戦略的施策を実施しております。2、3の例を述べますと、平成21年度から本学教員の高い国際性を自ら会得させ、その経験を教育に生かすことによって学生への国際性を強化する施策として、半年から1年程度若手教員を海外に留学させる「長期海外派遣制度」を制定しました。現在すでに約40名の文系・理系の研究者が留学しており、4年間で60名の教員を計画どおり派遣する予定です。

さらに、教育研究の国際展開については、中国の北京とベルギーのブリュッセルに海外オフィスを開設するとともに、EUの大学・研究機関等との連携による教育研究を促進するため「EU総合学術センター」も設置しました。

そして、アジア、ヨーロッパ各国に留学生の方々の同窓会を10か所設立するなど「海外ネットワーク組織の構築事業」も着実に遂行してきており、本ネットワーク力が「知」の循環を創出する基盤になるものと期待しております。

このように神戸大学は国際化への努力を積み重ねてきた結果、外国人留学生の受け入れと日本人留学生の派遣人数は年々増加し、留学生の人数は現在 1,200名に達し、また海外派遣者数も450名を越えるようになってきました。今後皆さんは、このように世界各国に開設された多くの同窓会や海外オフィスを利用したグローバルネットワークをベースにして、多様な国々との国際的な交流を深めることによって、世界で活躍されるものと考えております。

神戸大学のもう一つの特色として「学際性」を取り上げることができます。

従来より、神戸大学は学際性・総合性を有し、調和のとれた教育研究を飛躍・発展させるために、新たな教育研究組織の設置や異分野間との連携組織を編成するとともに、柔軟に幅広く物事を捉えることのできる人材の育成にも努力してまいりました。

昨年、異分野間の融合研究を推進するためポートアイランドに設置した「統合研究拠点」には、分子から宇宙に至るまでの広範囲なスケールでの学術研究を進展させる目的で、8つのプロジェクトが入居し研究活動を開始しております。

西隣にある世界最速スーパーコンピュータ「京」とのプロジェクト研究に関する連携も計画が進んでおり、その他、計算科学研究機構、複数の大学、諸研究機関及び多くの企業などポートアイランド地区の諸機関との連携を深め、国際的な産学官の融合研究拠点の形成を目指してゆく計画です。

このように、皆さんは、神戸大学の国際性を重視した世界的な教育研究の恵まれた環境の中で貴重な経験を積み重ね、研鑽されてこられました。

さて、話は変わりますが、東日本大震災に関わる神戸大学の取り組みについて、少しお話をしたいと思います。

昨年3月11日に発生した大震災から1年の歳月が過ぎましたが、現時点においても未だ復旧・復興への道のりは険しく、国を挙げての懸命の努力が行われています。17年前、阪神・淡路大震災で大きな被害を受けた本学は、その経験を生かし、震災当初から多くの支援活動を行ってまいりました。

具体的には、救急医療チームによる医療支援、救援物資及び施設職員などの人的・物的支援を始め、学生及び教職員によるボランティア活動など緊急支援活動を行ってまいりました。また、緊急的な支援とは別に、東日本大震災からの復興に向けた、神戸大学としての数々の提言をまとめ、当時、復興構想会議議長を務めておられた五百旗頭 真 議長に提出するとともに、本提案を題材とした公開シンポジウムも開催いたしました。

最終的には、このシンポジウムでの議論を契機として、被災大学同士として東北大学との間で、災害科学分野における包括的な連携協定を締結し、復興に向けた学術研究、人材養成、社会貢献など多くの分野で協力関係を強化することとなりました。今後も、神戸大学は、人との"絆"を大切にし、全学的に長期的な活動・支援を継続的に実施してゆく所存です。

このような災害は何も震災に限った事ではなく、地球温暖化や自然生態系の破壊などの環境問題を含め、我々の予想を遥かに超える様々な災害や困難を引き起こす可能性があることを認識する必要があります。

我々人類は、自然に対して如何に未熟であり無知であるかを痛感しますが、だからこそ、我々は絶えず未知との戦いに立ち向かい、知恵と創造力を駆使して、一歩ずつ克服してゆく努力を積み重ねてゆかねばなりません。

ご存知のとおり、現在社会においては環境やエネルギーなどの問題だけでなく、政治状況や経済環境においても世界全体が、大きな変革期にあります。

長期のデフレ経済や人口減少、少子高齢化等の理由により、ここ数年経済成長が芳しくない先進国を尻目に、中国やインドを始めとする高度成長を続けているBRICsと呼ばれる新興大国の躍進で、世界のパワーバランスに大きな変化をもたらしていることはよく知られています。我々は、このような、世界構造の著しい変化の中で、先ほど述べましたような多くの難題を解決してゆかねばなりません。

しかしながら、皆さんが、神戸大学の強みである「国際性」と「学際性」という特色ある風土の中で学ばれた教育、そして困難に直面されておられる人々との"絆"や連携を大切にする教育によって得られたポテンシャルを十分発揮されることによって、このような課題を解決していただけるものと信じております。

最後になりますが、グローバル社会で皆さんが人類の未来のために、大いに羽ばたき御活躍されますことを祈念し、平成23年度学位授与式の式辞といたします。

平成24年3月23日
神戸大学長 福田 秀樹