【式辞】平成24年度 入学式 式辞

新入生の皆さん神戸大学入学おめでとうございます。ご列席いただいております保護者の皆様、本日は誠におめでとうございます。神戸大学の全構成員を代表して、御入学のお祝いを申し上げます。

さて、この春、神戸大学は学部に2,632名、大学院博士課程の前期課程に1,260名、博士後期課程に344名、法科大学院と経営学専門職学位課程に156名、編入学生として140名の皆さんをお迎えすることができました。神戸大学長としてこのように多くの新入生をお迎えすることができ嬉しく存じます。

 

神戸大学は、11の学部と14の大学院、法学と経営学の二つの専門職大学院、経済経営研究所、自然科学系先端融合研究環、医学部附属病院、さらに多くの教育研究に携わるセンター群と複数の図書館で構成された総合大学です。教員数約1,600名、職員数は約1,700名、そして学生数は、学部と大学院を合わせると16,000名を超える大きな規模を誇る全国有数の大学です。

 

本学は、「真摯・自由・協同」の理念と創設以来育まれてきた国際性豊かな教育研究の特色を活かしつつ、長年の努力を積み重ね伝統を築き上げてきた結果、研究および教育のいずれにおいても世界的に卓越した総合大学として発展してまいりました。

さて、神戸大学における学術分野を大きく分けますと、人文・人間科学系、社会科学系、自然科学系および生命・医学系の4つの学術系列に区分出来ます。いずれの系列に属する学部・研究科においても優れた特色を有し、世界的に高い評価を得ている部局がそろっております。

 

また、本学は、国際性、総合性、専門性、人間性など多くの特徴を有しておりますが、これらの説明を通じて、各々の学部や研究科のご紹介をさせていただきます。

 

まず最初に、「国際性」についてお話をします。

 

神戸大学は、現在海外の48カ国の国や地域にある205もの大学や研究機関と日常的に学術・文化の面で交流を行っており、78カ国におよぶ国々から1,200名を超える留学生を受け入れています。このように、神戸大学は国際性の香り高い雰囲気を持つ大学ですが、国際性をより強化させるために、いくつかのグローバル戦略を考えております。第一には、教員の国際性・国際化に対する強化策です。本学教員に高い国際性を自ら会得させ、その経験を教育に活かすことを主目的として、平成21年度から毎年15名を1年程度の期間若手教員を海外に留学させる「長期海外派遣制度」を制定しました。

 

さらに、教育や研究の国際展開については、ベルギーのブリュッセルと中国の北京に海外オフィスを開設するとともに、EUの大学・研究機関等との連携による教育研究を促進するため「EU総合学術センター」も設置しました。

特に、ブリュッセルはEUの首都であり、政治や経済の中心地でもあります。我が国の大学でこの地にオフィスを設置しているのは本学のみであり、EUからの高い評価と期待が寄せられ、今後のEUを拠点とした国際展開を積極的に推進して行けるものと考えております。既に、本拠点を軸として、文学部・人文学研究科では、イギリスのオックスフォード大学との大学間学術交流協定を締結し、同大学の交換留学生の受け入れなど積極的な国際交流を実施しております。また、国際文化学部・国際文化学研究科では、ベルギーのルーヴァン・カトリック大学とのダブルディグリー・プログラムの締結を始め、イギリス・フランス・ドイツなど多くのEUの諸大学との交換留学も推進しております。

 

その他、「海外のネットワーク組織」として、アジアおよびヨーロッパ各国に留学生を中心とした同窓会組織を10か所設立しました。このようなネットワーク組織が「知」の循環を創出する基盤になるものと期待しております。

 

次に神戸大学の2つめの特徴である「総合性」について説明します。

 

自然科学系では、平成19年に、理学研究科、工学研究科、農学研究科、および海事科学研究科の独立した4つの研究科と、5つのセンターから構成される「自然科学系先端融合研究環」というユニークな教育研究組織を設置しました。本組織は、先端的研究の推進を図る目的だけでなく、自然科学系大学院の横断的講義も行っています。皆さんは、この組織により、学際的な視点からの高度な教育を受けることができ、単に限定された専門分野だけでなく、他の複数の分野における幅広い教育を受けられることになります。

 

また、昨年、平成23年には、ポートアイランド地区に異分野間の融合研究を推進するため「統合研究拠点」を、そして、本年には「国際コンベンションホール」を連結して設置しました。本拠点では、分子から宇宙に至るまでの広範囲なスケールの学術研究を進展させる目的で、自然科学系を中心とした8つのプロジェクトが入居し研究活動を開始しております。さらに、西隣にある世界最速スーパーコンピュ-タ「京」とのプロジェクト研究に関する計画が進んでおり、国際的な産学官の融合研究拠点の形成を目指しております。

 

次に、法学研究科、経済学研究科、経営学研究科、国際協力研究科、および経済経営研究所から構成される社会科学系5部局の総合性を発揮し、新たな課題に対処するため、この4月に「社会科学系教育研究府」という組織を設置しました。現在日本の企業や産業の国際競争力を強化することは喫緊の課題であり、また、国際的な活動を先導的に果たすリーダーの養成も重要な課題として位置づけられています。そこで、本学の社会科学系5部局が連携し、このような課題を克服するために本組織が設置されたもので、グローバルな視野を有し世界的なリーダー育成のための教育研究を実施することになりました。

 

また、文学部、国際文化学部、発達科学部、経済学部、工学部、および農学部の6学部が総合的な連携組織を構築し、持続可能な社会づくりに資する人材を養成するためのユニークな「ESD」と呼ばれるサブコースも開講しております。地球規模の環境破壊や大量消費のための「開発」から、次世代の「持続可能な社会」への転換を達成するには、このような本学の総合性を活かした人材の育成が何よりも重要な課題です。

 

次に「専門性」についてですが、生命・医学系では医学部医学科と保健学科が神戸医療産業都市構想とも連携して、高度先進医療の開発や地域医療の推進に取り組んでいます。大学病院関係では、特に高度医療分野に力を入れ、ロボットを用いた先端医療や患者の負担を著しく軽減する「低侵襲がん医療」など我が国における最先端医療のフロンティアとして注目され、発展してきてしております。また、医学研究科では、細胞内情報伝達機構を中心とした基礎研究が発展し、生命科学研究の世界的な拠点として幾多の優秀な研究者を輩出しています。

 

さらに、健康科学分野では、システム情報学、保健学、医学、工学および人文・社会科学系の多くの研究者が連携し、高齢化社会に対応した最先端の健康科学の研究も発展しております。

 

また、海事科学部・海事科学研究科は、海・船を舞台にした地球規模の人間活動に関わる輸送・情報・エネルギー等の問題を解決するために、自然科学分野と社会科学分野とを連携させ学際的でユニークな教育研究を行っております。

 

最後に「人間性」についてですが、一例として昨年3月11日に発生した「東北地方太平洋沖地震」に対する神戸大学の取り組みについてお話をしたいと思います。

 

神戸大学は、17年前に阪神・淡路大震災で大きな被害を受けると同時に、被災地の復旧・復興のために、様々な側面で広く社会への貢献を求められました。全国より多大な支援を得て復興した本学は、この時の貴重な体験から、今回の震災については、まず何よりも迅速な対応が必要であると判断し、行動を起こすことにしました。震災発生直後に、学生ボランティア支援室の主要メンバーは、当日夕方には災害支援の調査のため被災地に向けて出発しました。震災翌日には、多分野の教員が連携して復旧・復興支援の具体的活動を推進するための「復興支援プラットフォーム」を結成し、備蓄されていた非常食を被災大学へ発送しました。その他、医学系の教員による災害医療支援チームの派遣や、各種インフラ施設等の被害調査を実施しました。

一方、緊急的な支援とは別に、東日本大震災からの復興に向けた、神戸大学としての数々の提言をまとめ、五百旗頭 真復興構想会議議長に提出するとともに、本提案を題材とした公開シンポジウムも開催いたしました。最終的には、被災大学同士として東北大学との間で、災害科学分野における包括的な連携協定を締結し、そのための新組織として、「災害復興支援・災害科学研究推進室」も設置しました。

このように神戸大学は、阪神・淡路大震災の経験から得た“絆”や“助け合い”を大切にする風土が根付いております。

 

以上神戸大学のいくつかの特徴を取り上げましたが、このような特徴だけにとどまらず、神戸大学には他にも多くの優れた教育研究環境を整備しておりますので、是非ご期待ください。

 

ところで、神戸大学は1902年 (明治35年) に高等教育機関として設置された神戸高等商業学校を創立の起点としており、本年、記念すべき110周年の節目の年を迎えました。この間、12万人余りの人材を世に送り出し、国内外の多くの分野で輝かしい足跡を残してきました。この5月15日には、「神戸大学創立110周年記念式典」を挙行いたします。なお、この式典では、2008年度ノーベル生理学・医学賞を受賞されましたフランスのリュック・モンタニエ博士と、楽天株式会社代表取締役会長兼社長の三木谷浩史 (みきたに ひろし) 氏による記念講演を予定しております。

 

神戸大学は、この110周年の式典を契機として、国際都市神戸にふさわしい世界的に卓越した教育研究拠点となるべく「グローバル・エクセレンス」の実現に向けて、さらなる発展を目指し邁進してゆく所存です。

 

最後になりますが、皆さんは、この神戸大学の国際性豊かで、開放的な教育環境下で学ばれ、是非、世界に目を向けて、グローバルな社会で活躍できる人材となるべく努力を積み重ねられることを祈念し、私の式辞とさせていただきます。

 

平成24年4月6日
神戸大学長 福田 秀樹