【式辞】平成27年度 (3月期) 博士学位記授与式 式辞

博士学位を取得された皆さん、ご家族の皆様、誠におめでとうございます。神戸大学全構成員を代表しまして心からお祝いを申し上げます。

今期は課程博士183名、論文博士17名の計200名が博士学位を取得されました。このうち留学生は37名と、約19パーセントを占めております。神戸大学は世界に開かれ、そして国立大学の三類型において「世界最高水準の教育研究」を行う大学に名乗りを上げ、教育研究において世界と競うグローバルな大学を目指していますが、留学生の博士学位授与者をこのように多数輩出でき大変嬉しく思います。

博士の学位は創造性、新規性そして論理性など総合的にまとめられた独自性のある学位論文を基本として評価、授与されるものです。皆さんは、日夜研究活動に没頭され、長年のご努力・ご苦労の甲斐あって、見事、厳しい学位審査に合格され、本日、神戸大学の学位を授与されることとなりました。改めまして、お祝いを申し上げます。しかしながら、学位取得は、新たな可能性へ向けての第一歩でしかありません。研究を行ううえでの、また論文を作成するうえでの基本的な作法を学んだに過ぎません。これらは、新しい目標に向けての人生のツールともなるべきものです。それぞれの目標に向かって果敢にチャレンジしていただきたいと願っております。

さて、私たちは今、グローバル社会において様々な課題と向き合っています。地球温暖化、原子力エネルギーの利用、水資源不足、超高齢化社会、ビッグデータに象徴される溢れるほど様々な情報の管理、周辺国を巻き込んだ内戦・紛争、宗教的な軋轢等々、どれひとつをとっても簡単な解決方法を提示することは極めて困難です。「グローバル化」そのもののあり方を問うことも必要かもしれません。我々が大学で行っている教育研究が、これらの諸課題の解決にどう貢献できるのか常に問い続ける必要があると思います。

学問分野は深化するにつれて、その専門性が高くなり、ややもすると自分の行っている研究の立ち位置を見失うことがあります。専門性を振りかざすだけでは、社会の抱える複雑な問題には対処できません。専門分野を超えた複合的な視点を持たなければ将来の展望は開かれないのではないかと考えます。

「学際融合」、「文理融合」は古くて新しい言葉です。様々な要素が錯綜する複雑な問題に立ち向かうとき、専門の違う人間が協力すること、あるいは一人の人間の中に複眼的な発想を可能にすることが必要です。神戸大学はその110年余の歴史と伝統を通じて、文系と理系のバランスの良い総合大学に発展してきました。その強みを活かして、今年の4月から文理融合の「科学技術イノベーション研究科」を設立し、自然科学系の研究で生まれた「種」を、社会科学系の知見を活用して社会実装まで持っていく教育・研究を目指します。環境問題、医療問題などへの貢献が期待されています。これは、神戸大学創設以来の理念「学理と実際の調和」にも合致する試みだと考えています。この理念は、本学の出発点である神戸高等商業学校の初代校長 水島銕也先生が唱えられた言葉ですが、学理とともに実務を重視された伝統として受け継がれ、時空を超えた本学の理念となっています。

今日ここにおられる皆さんには、このような風土や伝統を有する神戸大学で博士の学位を取得され、高い専門力と実践力の双方を兼ね備えておられます。是非ともグローバルな課題に挑戦者として挑み、本学で学ばれ培われた実力を遺憾なく発揮され、世界に貢献できる人材として活躍されますことを期待して私の式辞といたします。

平成28年3月24日
神戸大学長 武田 廣