【式辞】平成27年度 学位記授与式 (学士、修士他) 式辞

本日、学部を卒業される皆さん、大学院前期課程および専門職学位課程を修了される皆さん、卒業並びに修了、おめでとうございます。参列いただいているご家族の皆様にも、神戸大学全構成員を代表しまして心からお祝いを申し上げます。

先ほど、学部の卒業生2,574名、大学院修士・博士前期課程修了者1,185名並びに法学研究科及び経営学研究科の専門職学位課程修了者70名の方々に学士、修士及び専門職学位の学位を授与しました。

さて、皆さんはこれまで大学・大学院という組織の中で教育を受け、研鑽を積んでこられました。そして、これから夢と希望を胸に秘め、限りなき未来に飛び立とうとされています。しかしながら、その未来には、複雑で厳しい世界が待ち受けているものと思います。

社会の中には、これまで習得された専門知識だけでは解決が困難な問題が山積しています。地球温暖化、水資源の不足、少子高齢化、近隣国をも巻き込む民族紛争や難民問題など、喫緊の課題のいくつかを列挙しただけでも、単一の専門分野だけで解決の糸口をつかむのが難しいことがおわかりいただけると思います。複数の分野の有機的な協力によって初めて解決の方向性が見えてくるものと思われます。

「学際融合」、「異分野連携」という発想はかなり以前から存在し、大学や研究機関において様々な試みがなされてきました。しかし、今ほどこの複眼的なアプローチが求められている時代はないと思います。狭い専門領域に閉じこもることなく、広い視野を持って他分野との協力関係を築き上げることが大切です。このことは、会社組織であっても、アカデミアの世界であっても、皆さんにとって重要な観点だと思います。

この異分野との連携・融合という考え方は、文系、理系の垣根も超えて追求すべきものであります。例えば、情報技術の急速な進展に伴い、ビッグデータの活用が社会的な大きな課題としてクローズアップされています。情報という素材を最大限活用するには、文系、理系の発想、技術がともに要求されることになり、社会はそのような人材を求めています。

昨年の6月に文部科学省から、大学改革に関連して、人文・社会系分野の軽視とも取られかねない通知がなされ、学術界、産業界、マスコミ等で活発な議論が展開されたことは、記憶に新しいことと思います。大学が輩出すべき人材は、みずからの専門に立脚しながらも他分野を俯瞰できる総合力を備えるべきであると信じています。「連携」や「融合」は、既成概念にとらわれない、インパクトのある成果を生み出す原動力となり得ますが、これは大学に限ったことではなく、企業など実社会においても同様のことが言えます。

神戸大学はその100年余の歴史と伝統を通じて、文系と理系のバランスの良い総合大学に発展してきました。その強みを活かして、今年の4月から文理融合の「科学技術イノベーション研究科」を設立し、自然科学系の研究で生まれた「種」を、社会科学系の知見を活用して社会実装まで持っていく教育・研究を目指します。環境問題、医療問題などへの貢献が期待されています。これは、神戸大学創設以来の理念「学理と実際の調和」にも合致する試みだと考えています。この理念は、本学の出発点である神戸高等商業学校の初代校長 水島銕也先生が唱えられた言葉ですが、学理とともに実務を重視された伝統として受け継がれ、時空を超えた本学の理念となっています。

今日ここにおられる皆さんには、このような風土や伝統を有する神戸大学での学位を取得され、高い専門力と実践力の双方を兼ね備えておられます。是非ともグローバルな課題に挑戦者として挑み、本学で学ばれ培われた実力を遺憾なく発揮され、世界に貢献できる人材として活躍されますことを期待して私の式辞といたします。

 

平成28年3月25日
神戸大学長 武田 廣