【式辞】平成28年度 入学式 式辞

新入生の皆さん神戸大学入学おめでとうございます。ご列席いただいております保護者の皆様、本日は誠におめでとうございます。神戸大学の全構成員を代表して、入学のお祝いを申し上げます。

この春、神戸大学には学部に2,647名、大学院博士課程の前期課程に1,212名、後期課程に286名、法科大学院と経営学専門職学位課程に144名、編入学生として134名の皆さんが入学しました。神戸大学長として多くの新入生を迎えられたことを嬉しく思っています。

皆さんがこれから学ばれる神戸大学は、誇るべき数多くの特徴や魅力を有しています。その、いくつかを紹介します。

一つ目は、全国有数の規模を誇る総合大学であるという点です。

神戸大学は、11の学部と15の大学院、法学と経営学の二つの専門職大学院、経済経営研究所、先端融合研究環、医学部附属病院、さらに多くの教育研究に携わるセンター群と複数の図書館で構成された総合大学です。教員数約1,600名、職員数約1,800名、そして学生数は、学部と大学院を合わせると16,000名を超える総合大学です。

本学の教育研究は極めて幅広い分野にまたがっています。人文・人間科学系、社会科学系、自然科学系および生命・医学系の4つの学術系列があります。それぞれの系列に所属する学部・研究科はいずれも優れた特色を持ち、世界的に高い評価を得ています。また、それぞれの学術系列の中、あるいは学術系列を越えて、学際的な教育・研究が行われていることも神戸大学の大きな特徴です。

キャンパスは主に4つの地区から構成されています。六甲台地区には人文・人間科学系、社会科学系および自然科学系の各部局、楠地区には医学部、医学研究科および医学部附属病院、名谷地区には保健学研究科、そして深江地区には海事科学部・海事科学研究科があります。特に六甲台地区は、背後に六甲山系を控え、眼下に神戸港を望むすばらしい勉学の場所であります。

2011年には、新キャンパスとしてポートアイランド地区に「統合研究拠点」が設けられました。西隣にスーパーコンピュ-タ「京」がある利点を活かして、連携して最先端の研究を推進しています。

二つ目は、歴史と伝統のある総合研究大学であることです。

神戸大学は、1902年(明治35年)に創立されました。開学以来、「学理と実際の調和」という理念を掲げ、普遍的価値を有する「知」を創造するとともに、人間性豊かな指導的人材を養成することを使命としてきました。

本学はこの110余年の間に、教育、研究、社会貢献などの分野で数多くの輝かしい成果を創出してきました。その中には、文化勲章やラスカー賞などを受章されました西塚泰美先生や文化功労者の五百旗頭真先生を始め、これまでに本学所属の多数の方々が輝かしい受賞をされておられます。また最近では、本学医学部ご卒業の山中伸弥京都大学教授がノーベル生理学・医学賞を受賞されたことは記憶に新しいことと存じます。

神戸大学は、その歴史において、文系と理系のバランスの取れた総合大学へと発展してきており、昨年には新たなビジョン「先端研究・文理融合研究で輝く卓越研究大学へ」を掲げ、国立大学の機能強化三類型において「世界最高水準の教育研究」を行う大学に名乗りを上げ、世界と競うグローバルな大学を目指しています。

また、平成28年4月に、新しい研究科である「科学技術イノベーション研究科」が誕生しました。この研究科は、社会科学分野と自然科学分野の構成員が一体となり、自然科学分野で得られた研究成果を社会へ還元する事業創造に焦点を当てた、日本初の文理融合型の独立大学院です。本研究科のカリキュラムを通じて養成される人材は、産業界のさまざまな分野から求められているイノベーションを推進するリーダーとして活躍してくれるものと期待しております。

三つ目は、国際性豊かで変化への対応に優れた大学であることです。

神戸大学は世界に開かれた港町神戸に位置するため、創立当初から国際性を意識しての教育、研究を進めて現在に至っています。昨年度の海外からの留学生は1,100人を越えております。また、海外中核大学と共同研究や連携教育の重層的な交流を図り、世界各地から優秀な人材が集まり、世界へ飛び出していくハブ・キャンパスとしての機能を飛躍的に高めています。

今、我々を取り巻く世界は目まぐるしく変化しています。喫緊の課題としても、地球温暖化、水資源の不足、エネルギー問題、少子高齢化社会、などなど枚挙に暇がありません。個別の専門分野で、これらの複合的な問題に対処することは殆ど不可能です。課題解決のアプローチとして、本学の伝統と特色を生かし、文系・理系という枠にとらわれない先端研究を推進し、新たな学術領域を開拓することが必要と考えます。同時に、学部と大学院のつながりを強化し、先端研究の臨場感のなかで学生の皆さんが創造性と学識を深めることを重視します。俯瞰的な視野の育成も重要な観点です。

これらの教育研究を社会と協働して推進し、先端的技術の開発と、研究成果を社会問題解決のために応用、展開する社会実装を通じて人類に貢献するとともに、地球的諸課題を解決するために先導的役割を担うことのできる“グローバル人材”として、皆さんを世に送り出すことが最重要課題です。神戸大学は、語学力・コミュニケーション能力を身につけ、異文化を深く理解する一方で日本人としてのアイデンティティを確立した人材を育てていきます。

本学は、グローバル化のために様々な手を打ってきました。一つは、個々の教員のグローバル化です。毎年15~20名の若手教員を海外に長期派遣しています。海外で研究活動をすることで、研究力が向上するだけでなく、現地での慣習に触れることで異文化理解が深まり、人的ネットワークも形成できます。派遣教員は世界の舞台で仕事ができたという自信をつけて帰国します。この教員の体験が、学生達が学ぶ意欲や広い世界に打って出る意欲を強くサポートします。

また、学生の皆さんが「課題発見型のリーダーシップ」を発揮できるかも重要なポイントになります。本学では、全ての学生が自ら地球的課題を発見し、その解決にリーダーシップを発揮できる人材へと育成することを学士課程の課題として、教育改革を行ってきました。その一環として、全学部学生を対象とする教養教育において、本学学生が卒業時に身につけるべき共通の能力を「神戸スタンダード」として定めました。「複眼的に思考する能力」「多様性と地球的課題を理解する能力」「協働して実践する能力」の修得を教養教育の学修目標としています。

さらに、本学は昨年度まで、前期と後期の2学期でしたが、留学等の学外活動への参加を促進し、短期集中型による学修を可能とするため、今年度よりクォーター制を導入し、授業期間を4つに区分しました。1つのクォーターを「ギャップターム」として利用し、留学や海外教育プログラムに参加し、なおかつ4年間で卒業することも可能になります。また、海外からの学生の受け入れを促進しキャンパスの更なる国際化をはかります。

グローバル教育プログラムの充実にも取り組んでおり、文系・理系のほとんどの学部や大学院研究科でグローバル教育プログラムを開設するとともに神戸大学生の海外への派遣を進め、また留学生受け入れプログラムも発展させています。今年度から開始される「神戸グローバルチャレンジプログラム」は、1年次・2年次の1クォーターを「チャレンジターム」として設定し、国際的なフィールドで皆さんが取り組む自主的な活動を、「グローバルチャレンジ実習」として単位認定するものです。このプログラムを通して、皆さんが異文化環境の下での自らの体験に基づき、グローバル人材として必要な「課題発見・解決能力」の必要性を感じて、学びの動機づけを得るとともに、その後の海外留学等の国際的なフィールドでの更なる活動にチャレンジされるきっかけになると期待しています。

また、神戸大学は皆さんが世界に出て行く足場も作っています。ヨーロッパ、中国、ベトナムに海外事務所を設けています。現在はアメリカの事務所設置も検討しています。海外の12カ国に設立された海外同窓会を含め、何より、皆さんが国際的な交流を図るのに必要な人的ネットワークが多数存在しているのです。

最後に新入生の皆さんに私からの3つのメッセージを贈ります。一つは「学ぶ」ということです。当たり前のことですが大学ではしっかり勉学に励んでください。高校までの勉強は、これからの「学び」の基礎体力でしかありません。解答が存在するのか、それすらもわからない問題にチャレンジすることもあります。最近はICTの発達に伴い、インターネットで様々な知識を簡単に手に入れることができます。しかし、大学において、教員あるいは同級生と議論しながら得た知識・考え方は質的に異なったものです。

次に「友人をつくる」ということです。生涯の友を大学でたくさん作ってください。ネット上の仮想空間における友達ではなく、生身の友人と交流してください。先程から「グローバル人材」という言葉を何度も使ってきましたが、言語の壁の問題もありますが、ポイントは専門力、総合力を兼ね備えた、コミュニケーション能力の高い人材であると考えます。自分の周りに友人を作ることができなければ、世界の友人もできるはずがありません。

最後に「世界に目を向ける」ということです。これまでお話ししたとおり、本学は世界に向けて視野を広げる様々な機会を準備しています。大いに活用してください。世界には、経済的理由、内戦などの政治的理由により、学びたくても学べない、皆さんと同年代の若者がたくさんいます。我々の理念とは相容れない過激な思想も蔓延しています。危険な紛争地もありますので注意は必要ですが、若い時期に国外から日本を眺めるという経験は、その後の人生において大きな財産となることは間違いありません。

今日から、さまざまな場で新たな出会いがあると思いますが、失敗を恐れず、より積極的に出会いを求め、その経験から人間として成長していただくことを祈念して、私の式辞とさせていただきます。

(平成28年4月5日 神戸大学長 武田 廣)