【式辞】平成29年度 入学式 式辞

新入生の皆さん神戸大学入学おめでとうございます。ご列席いただいております保護者の皆様、本日は誠におめでとうございます。神戸大学の全構成員を代表して、入学のお祝いを申し上げます。

この春、神戸大学には学部に2,621名、大学院博士課程の前期課程に1,226名、後期課程に328名、法科大学院と経営学専門職学位課程に141名、編入学生として137名の皆さんが入学しました。神戸大学長として多くの新入生を迎えられたことを嬉しく思っています。特にこの4月、平成4年以来25年ぶりに、神戸大学に新たな学部「国際人間科学部」が設置され、第1期生384名を受け入れることができました。この学部では、現代社会が地球的規模で協働して取り組むべき課題に対して、様々な専門分野からアプローチを行い、課題解決に向けたリーダーシップを発揮できる「協働型グローバル人材」を育成します。われわれ教職員も全力で新学部の運営を行いますので、1期生の皆さんの頑張りに期待しております。

受験のため本学のホームページをご覧になった方は、平成31年度入試から実施される「志」特別入試をご存知かもしれません。今回ご入学の皆さんには直接関係はありませんでしたが、この入試は、新たな方法で学生選抜を実施し、グローバル化されていく社会の中で、各分野のリーダーとなって21世紀の人類社会に貢献したいという高い「志」を持った学生を見出そうとするものです。この話は何も特別入試だけに限ったものではありません。皆さんはこれまでの厳しい受験勉強を経て、本日、この式典に出席されていますが、それは神戸大学への入学がゴールなのではなく、それぞれの将来像を持って学修に励み、専門分野を探求して社会へと羽ばたいていく、そのスタート地点なのです。単に知識を集積するだけではなく、その知識を得て将来何をなすのか、皆さんの目標、「志」をもう一度見つめなおしてください。

さて、皆さんがこれから学ばれる神戸大学は、誇るべき数多くの特徴や魅力を有していますが、その主なものを三つ紹介いたします。

一つ目は、全国有数の規模を誇る総合大学であるという点です。

神戸大学は、10の学部と15の大学院、法学と経営学の二つの専門職大学院、経済経営研究所、先端融合研究環、医学部附属病院、さらに多くの教育研究に携わるセンター群と複数の図書館で構成され、教員数約1,600名、職員数約1,900名、そして学生数は、学部と大学院を合わせると16,000名を超える総合大学です。キャンパスは主に4つの地区から構成されています。六甲台地区には人文・人間科学系、社会科学系および自然科学系の各部局、楠地区には医学部、医学研究科および医学部附属病院、名谷地区には保健学研究科、そして深江地区には海事科学部・海事科学研究科があります。また、2011年には、新キャンパスとしてこのポートアイランド地区に「統合研究拠点」が設けられました。西隣にスーパーコンピュータ「京」がある利点を活かして、連携して最先端の研究を推進しています。

本学の教育研究は極めて幅広い分野にまたがっており、人文・人間科学系、社会科学系、自然科学系および生命・医学系の4つの学術系列に分類されます。それぞれの系列に所属する学部・研究科はいずれも優れた特色を持ち、世界的に高い評価を得ています。また、それぞれの学術系列の中、あるいは学術系列を越えて、学際的な教育・研究が行われていることも神戸大学の大きな特徴です。その顕著な取り組み例が、昨年4月に新たに設置された「科学技術イノベーション研究科」です。この研究科は、自然科学分野で得られた研究成果を社会へ還元する事業創造に焦点を当てた、文理融合型の独立大学院です。本研究科のカリキュラムを通じて養成される人材は、産業界のさまざまな分野から求められているイノベーションを推進するリーダーとして活躍してくれるものと期待しております。

二つ目の特徴は、歴史と伝統のある総合研究大学であることです。

神戸大学は、1902年(明治35年)に創立され、115年の歴史を有します。開学以来、「学理と実際の調和」という理念を掲げ、普遍的価値を有する「知」を創造するとともに、人間性豊かな指導的人材を養成することを使命としてきました。そして、その歴史において、文系と理系のバランスの取れた総合大学へと発展してきており、2015年には新たなビジョン「先端研究・文理融合研究で輝く卓越研究大学へ」を掲げ、国立大学の機能強化三類型において「世界最高水準の教育研究」を行う大学に名乗りを上げ、世界と競うグローバルな大学を目指しています。

本学は、文化勲章やラスカー賞などを受章されました西塚泰美先生や文化功労者の五百旗頭真先生を始め、教育、研究、社会貢献などの分野で数多くの輝かしい成果を創出してきました。また、優秀な人材を数多く輩出しており、医学部ご卒業の山中伸弥京都大学教授がノーベル生理学・医学賞を受賞されたことは記憶に新しいことと存じます。企業トップにも多くの卒業生が就任されており、本日ご講演いただくネスレ日本株式会社の代表取締役社長兼CEOの高岡 浩三(たかおか こうぞう)様も、本学の経営学部を卒業されておられます。

三つ目の特徴は、国際性豊かで変化への対応に優れた大学であることです。

神戸大学は世界に開かれた港町神戸に位置するため、創立当初から国際性を意識した取り組みを進めてきました。本学の海外大学等との大学間協定は146を数え、それらの大学・研究機関との共同研究や連携教育の重層的な交流を進める一方、グローバル教育プログラムの充実にも取り組んでおり、海外からの留学生は1,200名近く、本学からの学生派遣も700名を超えるまでになっております。欧米、アジアに海外オフィスを設立し、13カ国に設立された海外同窓会を含め、皆さんが国際的な交流を図るうえで必要な人的ネットワークを構築するなど、世界各地から優秀な人材が集まり、世界へ飛び出していく「ハブ・キャンパス」としての機能を高めるための様々な施策を実施しています。

世界では今、地球温暖化、水資源の不足、エネルギー問題、宗教問題・地域紛争など、関係各国の協力が無ければ解決が不可能なグローバルレベルの問題が山積していますが、一方で、自国利益のために他国との関係を見直すような動きが次々と起こっています。本学では、このような地球的課題に対して、本学の伝統と特色を生かし、文系・理系という枠にとらわれない先端研究を推進し、新たな学術領域を開拓することが必要と考えます。同時に、学部と大学院のつながりを強化し、先端研究の臨場感のなかで学生の皆さんが創造性と学識を深めることを重視します。そして、自己の専門分野に立脚しながらも、他分野を俯瞰できる広い視野を持ち、語学力・コミュニケーション能力を身につけ、異文化を深く理解する一方で日本人としてのアイデンティティを確立した人材を育てていきます。

特に本学では、全学部学生を対象とする教養教育において、本学学生が卒業時に身につけるべき共通の能力を「神戸スタンダード」として定め、その習得を学修目標としています。そして、「神戸グローバルチャレンジプログラム」では、昨年度より導入された2学期クォーター制を活用し、1年次・2年次の1クォーターを「チャレンジターム」として設定し、国際的なフィールドで皆さんが取り組む自主的な活動を、「グローバルチャレンジ実習」として単位認定します。平成29年度には14のコースを実施予定です。このプログラムを通して、皆さんが異文化環境の下での自らの体験に基づき、グローバル人材として必要な「課題発見・解決能力」の必要性を感じて、学びの動機づけを得るとともに、その後の海外留学等の国際的なフィールドでの更なる活動にチャレンジされるきっかけになると期待しています。

最後に新入生の皆さんに私からの3つのメッセージを贈ります。一つは「学ぶ」ということです。当たり前のことですが大学ではしっかり勉学に励んでください。高校までの勉強は、これからの「学び」の基礎体力でしかありません。解答が存在するのか、それすらもわからない問題にチャレンジすることもあります。最近はICTの発達に伴い、インターネットで様々な知識を簡単に手に入れることができます。しかし、大学において、教員あるいは同級生と議論しながら得た知識・考え方は質的に異なったものです。

次に「友人をつくる」ということです。生涯の友を大学でたくさん作ってください。ネット上の仮想空間における友達ではなく、生身の友人と交流してください。先程から「グローバル人材」という言葉を何度も使ってきましたが、言語の壁の問題もありますが、ポイントは専門力、総合力を兼ね備えた、コミュニケーション能力の高い人材であると考えます。自分の周りに友人を作ることができなければ、世界の友人もできるはずがありません。

最後に「世界に目を向ける」ということです。これまでお話ししたとおり、本学は世界に向けて視野を広げる様々な機会を準備しています。大いに活用してください。世界には、経済的理由、内戦などの政治的理由により、学びたくても学べない、皆さんと同年代の若者がたくさんいます。我々の理念とは相容れない過激な思想も蔓延しています。危険な紛争地もありますので注意は必要ですが、若い時期に国外から日本を眺めるという経験は、その後の人生において大きな財産となることは間違いありません。

今日から、さまざまな場で新たな出会いがあると思いますが、失敗を恐れず、より積極的に出会いを求め、その経験から人間として成長していただくことを祈念して、私の式辞とさせていただきます。

(平成29年4月4日 神戸大学長 武田 廣)