【挨拶】持続的な挑戦を

2018年01月04日

神戸大学長  武田 廣

新年明けましておめでとうございます。皆様方におかれましては、良いお正月を迎えられたことと存じます。昨年9月に実施された「研究大学強化促進事業」の中間評価において、本学は科研費採択数などの評価指標が伸び、上から2番目の「A」評価に躍進し、私も明るい気持ちで新年を迎えることが出来ました。皆様の努力に改めてお礼を申し上げたいと思います。昨年はこの他にも、神戸大学発ベンチャー企業3社の設立、数理・データサイエンスセンターの発足など、学外から高く評価される成果、取り組みが実現しました。今年は私の学長任期4年の最終年度を迎えますが、自信を持って皆様とともに神戸大学の発展を確かなものに仕上げて行きたいと思います。

「先端研究・文理融合研究で輝く卓越研究大学」を目指す新ビジョンを掲げ、現大学執行部がスタートして3年が過ぎようとしています。この間の最も大きな変化は、「文理融合研究」という考え方が完全に認知されたことです。当初は「総花的だ」などと冷ややかな評価を受けることもありましたが、文理融合の独立大学院・科学技術イノベーション研究科の設置、株式会社科学技術アントレプレナーシップ(STE社)を中心とした起業支援とバイオベンチャー企業の設立などの成果が認められ、大きな自信となっています。計算社会科学など新たな文理融合研究領域を創出していることも高く評価されています。

昨年12月には数理・データサイエンスセンターが発足しましたが、私が素粒子物理の研究者として痛感したのが、確率・統計学の重要性です。日本の教育ではこれらの分野に対する目配りが不足し、体系立ったカリキュラムがありません。社会科学における統計学の重要性は言うまでもありませんが、現代自然科学の柱である「量子力学」はまさに確率・統計学の世界です。確率・統計学が世界を支配しているのです。データサイエンスは文理融合にもってこいのテーマだと思います。

また、昨年4月には国際文化学部と発達科学部が統合され、「グローバル共生社会」の実現に貢献する「協働型グローバル人材」の養成を目指す国際人間科学部が設置されました。今年は設置2年目となり、グローバル・スタディーズ・プログラムによる学生の海外研修も本格的な活動が始まる時期になると思われますが、関係各位のご尽力によりこれらが実りあるものとなることを期待しています。

グローバル化ということでは、昨年も海外の著名な大学、研究機関との関係を深化させることが出来ました。アジアランキングでトップクラスのシンガポール・南洋理工大学とは、先ほどの数理・データサイエンス関係での交流を進め、私も現地を訪問いたしました。投じられているリソースの違いには圧倒されますが、愚痴を言ってばかりもいられません。相互協力を進めたいと思います。また、中国には3度訪問し、北京外国語大学の協力で新たに中国事務所を移転開設できました。欧州でも新たな現地オフィスの開設が進められ、学生及び教員の国際交流環境は更に充実しています。

今年は年始より、これまで取りまとめてきた本学の機能強化策を学内教職員へ説明するため、各キャンパスで説明会を開催します。研究大学で「A」評価を獲得したとはいえ、旧帝大系の大規模大学に基盤的経費の配分などで差をつけられている状態は続いています。研究、教育、社会貢献などあらゆる分野で挑戦を積み重ねて、序列の壁を突破したいと思います。また、昨年末に文部科学省から平成30年度の予算内示が行われましたが、その中で、神戸大学法科大学院が全国単独一位の補助金配分率135%を獲得したことは、特筆すべき朗報であります。関係者の努力に敬意を表したいと思います。昨年の衆議院選挙では「教育無償化」がクローズアップされた一方、学生を受け入れる大学側への風当たりはかえって厳しくなっており、若手人材の支援事業が行政レビューで中止されるという事態になっています。大学を取り巻くこのような厳しい財政状況についても、今度の学内説明会で教職員各位と共有したいと思います。

先日、大学入学50周年の同期会に出席しました。研究者になった者、企業で活躍した者など、いろいろな人生を歩みましたが、皆、学生時代に抱いていた「何かに挑戦したい」「社会に貢献したい」という夢を追いかけてきたのだと感じました。ひるがえって今私たち大学人が、若者に夢を与えられているのか、考え込みました。教員が夢の実現に向けて努力していること、ワクワクしながら研究に取り組んでいることが、とても大切です。研究費が削減されるなど閉塞感があるかもしれませんが、大学教員は好きなことに挑戦することができる恵まれた職業です。その恩恵を学生の教育や社会への情報発信としてきちんと還元していただきたい。また、大学職員も社会のモラルリーダーである大学を支える立場にあり、利益追求などのために節を曲げることを強いられたりしない仕事です。神戸大学の全構成員が大学人の誇りを持って、それぞれの持ち場で学問と神戸大学の発展に貢献していただくよう心からお願いして、新年のご挨拶とさせて頂きます。