環境に関する教育研究とトピックス[環境に関する研究]

地域に分散する未利用バイオマスからのバイオガス創生

バイオガスは、家畜糞尿、下水汚泥、食品残渣等の有機系バイオマスから嫌気性微生物による発酵によって得られるエネルギーです。近年、再生可能エネルギーとしての価値が見直され、これらの有機系バイオマスからバイオガスへ変換する取り組みが急速に広がっています。一般的に、バイオガスプラントと呼ばれる大規模集中型処理施設においてバイオガス生産は行われており、下水処理場や大規模畜産施設で普及が進みつつあります。一方で、地域にはバイオガス化がなされていない、少量のバイオマスが分散しています。小規模の畜産施設から排出される家畜糞尿や、食品工場や飲食店から排出される少量の食品残渣等が挙げられます。既存の大型プラントは初期費用が1億円を超え高額であることや、地域に分散するこれらのバイオマスは少量のためプラントのサイズに見合っていないことが、バイオガス化が進まない原因と考えています。

そこで、私が所属する農学研究科農産食品プロセス工学研究室では、地域に分散する少量バイオマスのエネルギー化のために小型バイオガスユニットの研究を進めています。プラントではなく小型ユニットとし、少量のバイオマスに見合った経済的な装置の開発です。現在、神戸市北区にある小規模都市型酪農場(弓削牧場)にユニットを2基設置し、現地実証試験に取り組んでいます。この酪農場では、酪農(1次産業)の他に乳製品加工施設(2次)や敷地内レストラン(3次)が設置され6次産業型の酪農が展開されています。敷地内から排出される乳牛糞尿や食品残渣を原料として投入し、発酵性能を評価しながら、バイオガスユニットの開発を進めています。装置を小型化しても発酵効率については大型プラントと遜色ない水準であることがわかってきました。

現在、より使いやすい装置として改良を進めるとともに、得られたバイオガスのエネルギー利用についての検討を進めています。大型プラントとは異なりコジェネ(熱電併給システム)による発電すなわち電気エネルギー変換は困難なため、熱エネルギーを柱とした本格的な利用について可能性を探っています。これらが成功すれば、地域に分散するバイオマスから得られた再生可能エネルギーの地産地消が実現することになり、新しいエネルギー創生に繋がるのではと期待しています。

  • 写真 バイオガスユニット
  • 写真 バイオガス利用の一例