レーザー消化管内視鏡治療装置の開発

研究担当者所属・職・氏名
医学研究科・教授・東 健
概要

我が国に多い消化管がんに対する低侵襲治療法として内視鏡的粘膜下層剥離術 (ESD) が普及されつつあるが、その手技は高度で、出血、穿孔等の合併症や、死亡例も報告されている。我々は、ESDで用いられる粘膜下層局注材の光吸収特性に注目し、中赤外波長レーザーを用いた、筋層を損傷しない安全なESD手技を提案した。中赤外波長領域では光吸収の強い波長が物質毎に異なり、物質固有の吸収波長と一致した波長のレーザーを用いると特定の物質のみに選択的に光を吸収させることができる。我々はこれまで、中赤外レーザーの一つで医療用に広く用いられている炭酸ガスレーザーの波長10.6micromでブタの胃、およびESD用の局注材として一般的に用いられている生理食塩水やヒアルロン酸ナトリウム溶液の光吸収特性を測定した結果、胃に比べて局注材の光吸収が約1.5倍になることを明らかにした。そして、粘膜下層へ局注材を注入して炭酸ガスレーザーを照射すると、粘膜層は切開されるが、粘膜層を貫通した後、局注材でレーザーが吸収され、筋層を傷付けないことが確認できた。また、炭酸ガスレーザーの光は肉眼や内視鏡のカメラで見ることができない波長であり、レーザー照射位置を確認するために可視波長のガイドレーザーが用いられる。このガイドレーザーの波長をヘモグロビンの吸収が強い532nm (緑色) とし、治療部位からのガイド光をモニタすることで、より安全なESD手技が実現できると考えられる。本研究では、歯科耳鼻咽喉科用炭酸ガスレーザー装置を改良し、安全なESDの実用化、および普及を目指す。平成24-25年度前半にレーザー装置、導光ファイバー、ガイド光伝送開発をモリタ製作所との産学連携により開発し、切除臓器での安全性及び有効性の評価に加え、生体ブタを用いた前臨床試験を通して装置の改良を行う。平成25度後半-26年度には早期食道がん、早期胃がん、早期大腸がんを対象に臨床研究を行い、平成26年度末までに薬事承認申請を行うことを目標とする。本研究成果により、ESDの更なる普及に加えて、新たな医療機器開発事業が展開され、国内の経済効果が上がるばかりでなく、国際的な普及により国際競争力が強化される。入院日数や治療期間の短縮等により、国民生活の質の向上、医療費削減にも繋がる。

期間 (年度)
平成24~26年度