1. 共同検討の背景と目的

 消化器内科における内視鏡検査では医師は両手が塞がった状態であるため、検査中に所見を覚えておく、もしくは看護師が記録しておき、検査後にシステム登録する流れが一般的です。その場合、検査後に別途パソコン等に向って所見登録するため、検査時間がトータルで長くなる傾向があります。特に、プルダウン形式で診断名などを選択し絞り込んでいく一般的なシステムでは、どのプルダウンの中に登録したい診断名が含まれているかを的確に覚えていない場合があり、登録作業に時間を要します。また、キーボードやマウスを使って操作するため、院内感染防止として、操作前後にアルコール消毒や手洗いが必要となり、医師の負担が増加します。
そこで、2015年8月に、神戸大学消化器内科とNTTは共同で、簡易な所見パターンを準備し、模擬的に内視鏡検査をしながら音声認識技術を活用して所見登録する手法を評価しました。その結果、約2~3割の時間短縮効果が認められたため、内視鏡情報管理システムを企画・開発しているFMI、音声認識サービスを提供しているNTTアイティを加えた4者で、音声認識技術を活用した内視鏡情報管理システムの製品化に向けて共同検討していきます。

2. 技術のポイント

 音声によって診断名などを登録するシステムは医療分野でも既に実用化されており、所定のカラムに音声入力していく方式では、医師は単語を発話して音声認識をさせ、結果が正しく登録されていることを確認してから次の単語を発話する必要があり、登録作業に時間を要します。フリーコメントで登録する方式では、比較的ストレスなく入力できるものの、認識率が十分でないことが一因となってまだまだ普及まで至っておらず、また、そもそもデータを構造化して登録できないため、データの再利用や検索などに適していない側面があります。

 NTTメディアインテリジェンス研究所では、予めマスターテーブルとして登録されている部位・診断名などのデータベース構造に着目して、自然な文章による発話で診断名などをカラムに登録でき、さらに、上位のキーワードが省略されても自動的に補完して登録できる手法を考案しました。これによって、検査中でもより短時間かつ自然に所見を登録することができます(図1)。

(図1) 神戸大学消化器内科とNTTとの共同実験の模様

3. 共同検討の内容と役割

 NTTが有する音声認識技術を活用して、内視鏡検査中に所見を音声で登録できるシステムを実現することで、検査の効率化や院内感染防止を目指します。FMIの内視鏡情報管理システム「NEXUS」に音声入力機能を具備したシステムの仕様検討、プロトタイプ開発を実施し、神戸大学消化器内科および系列病院で有効性を評価していきます。また、音声入力に適した使いやすい診断名などのマスターテーブルやユーザーインターフェースについても検討していきます。

【役割】
  • ・神戸大学消化器内科:音声入力による内視鏡情報管理システム全体の評価主管
  • ・FMI :内視鏡情報管理システムの開発・評価
  • ・NTTアイティ :音声認識システムの開発・評価
  • ・NTT :4者共同検討におけるプロジェクトマネージメント

4. 今後の展開

 本共同検討の取り組みを通して、検査の効率化や院内感染防止を目的とした、キーボードレスで検査の所見を効率的に登録できる検査スタイルを具現化し、「医療×ICT」による新たな価値創造を目指していきます。

関連リンク

(医学研究科、広報課)