図1 遺伝子組換えジャガイモの休眠後の様子

右の2個は、PGA1の発現を抑制した遺伝子組換えジャガイモ。3か月の休眠の後、20℃の暗所に7週間置いたが萌芽は始まらなかった。左の2個は遺伝子組換えを行っていない野生型のジャガイモ。休眠後、右の遺伝子組換えジャガイモと同じ条件に置いたところ萌芽した。

ジャガイモは、食用にするのは塊茎(かいけい)と呼ばれる部分ですが、日光を浴びて緑化した塊茎の皮の周辺と塊茎から出る芽に、「ステロイドグリコアルカロイド(SGA)」と総称される有毒物質が高濃度に蓄積されます。SGAは“えぐみ”の原因となり、含量が多くなると食中毒を引き起こします。
また、米や小麦などの穀類とは異なり、ジャガイモには「休眠期間」があります。収穫後数か月間、成長や発生が一時的に停止する“眠り”につきますが、休眠後に萌芽が始まるため、1年以上の長期保存はできません。萌芽を制御することもまた、ジャガイモ特有の課題でした。

今回、共同研究グループはRNA干渉法※2 でPGA1とPGA2の発現をそれぞれ抑制した遺伝子組換え植物体を作り出し、ジャガイモを収穫しました。どちらの遺伝子を抑制した場合も、遺伝子組換えを行っていないジャガイモよりも極めてSGA含量が低いことが分かりました。さらに、光を照射してもSGA含量は増加しませんでした。

PGA1とPGA2の発現をそれぞれ抑制した場合、ジャガイモの収量には差がみられませんでした。しかし、収穫したジャガイモは休眠期間を経過した後も萌芽しないことが分かりました(図1)。ところが、萌芽しないジャガイモを土に植えると、萌芽し始めました。この現象は4℃で3年間保存した後でも再現できました。これは、ジャガイモではこれまでみられたことのない現象です。SGAの生合成経路の変化により、萌芽を進めるどこかの段階に何らかの攪乱が起き、中断していることが予想できますが今のところ原因は分かっていません。

本成果により、今後、PGA1やPGA2遺伝子を標的としたゲノム編集などによる遺伝子破壊の手法を利用することで、SGA含量を低く抑え、かつ萌芽を制御できるジャガイモの育種が可能となると期待できます。


用語解説

※1:ステロイドグリコアルカロイド(SGA)
窒素原子を含むステロイドの配糖体。ナス科植物などで生成蓄積されることが知られている。ジャガイモではソラニン、チャコニンが主なSGAとして知られ、ジャガイモ食中毒の原因物質とされている。SGAはSteroid Glycoalkaloidの略。
※2:RNA干渉法
標的遺伝子配列の一部に相当する二本鎖RNAによって、標的遺伝子の発現を抑制する手法。

掲載雑誌

Plant Physiology

掲載論文

“Two Cytochrome P450 Monooxygenases Catalyze Early Hydroxylation Steps in the Potato Steroid Glycoalkaloid Biosynthetic Pathway”

Naoyuki Umemoto, Masaru Nakayasu, Kiyoshi Ohyama, Mari Yotsu-Yamashita, Masaharu Mizutani, Hikaru Seki, Kazuki Saito, and Toshiya Muranaka

関連リンク

(農学研究科、広報課)