今後の展開

 「抗PIT-1抗体症候群」が発見されたことにより、今まで原因不明とされていた下垂体疾患・下垂体機能低下症の患者さんの一部に対し、適切な診断・治療を行うことが可能となります。胸腺腫の患者さんの中にも、この症状を持つ方が潜んでいる可能性があり、診断、治療も可能となります。

 また、胸腺腫によって重症筋無力症が発症することはよく知られていますが、その発症のメカニズムは十分明らかになっていません。今回の発見はこの「抗PIT-1抗体症候群」のメカニズムだけではなく、重症筋無力症を始めとする、胸腺腫によって引き起こされる他の自己免疫のメカニズムの解明につながります。

 さらに、「抗PIT-1抗体症候群」は、悪性腫瘍に伴って様々な自己抗体と自己免疫が生じる「傍腫瘍症候群※4」にも位置付けられることから、難病である傍腫瘍症候群や、一般の自己免疫疾患のメカニズムの解明、治療法開発に結びつく可能性があります。

用語解説

※1:PIT-1
下垂体に発現する転写因子でGH, TSH, PRLの産生に必須である。遺伝子の異常によって先天性のGH, TSH, PRL欠損を引き起こす。本症候群では後天性に自己免疫によって障害されホルモン欠損を引き起こした。

※2:細胞障害性T細胞
細胞性免疫を担い、HLAとともに抗原エピトープを提示している細胞をT細胞受容体で認識して障害する。悪性腫瘍の腫瘍免疫で重要な役割を果たしている。

※3:胸腺腫
胸腺に生じる腫瘍。25%に自己免疫性神経疾患である重症筋無力症を合併し摘出によって改善する。胸腺ではT細胞のポジティブ選択とネガティブ選択が行われており、免疫の調節に非常に重要な働きをしている。

※4:傍腫瘍症候群
卵巣癌や悪性リンパ腫などの悪性腫瘍によって主に神経障害が引き起こされる症候群。悪性腫瘍が発現した蛋白に対する免疫反応よって自己抗体が産生され、神経組織を障害する。

論文情報

・論文
”A novel thymoma-associated autoimmune disease: Anti-PIT-1 antibody syndrome”

・著者
Hironori Bando, Genzo Iguchi, Yasuhiko Okimura, Yukiko Odake, Kenichi Yoshida, Ryusaku Matsumoto, Kentaro Suda, Hitoshi Nishizawa, Hidenori Fukuoka, Atsuko Mokubo, Katsuyoshi Tojo, Yoshimasa Maniwa, Wataru Ogawa, and Yutaka Takahashi

・掲載誌
Scientific Reports

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(医学研究科、広報課)