防火すごろくなど新しい防火教育への貢献を評価 工学研究科の大西准教授が日本建築学会教育賞受賞

2014年07月25日

神戸大学工学研究科建築学専攻の大西一嘉准教授らが中核となっているNPO日本防火技術者協会「老人福祉施設の避難安全に関する研究会」がこのほど日本建築学会教育賞を受賞しました。9月に神戸大学で開かれる2014年度日本建築学会大会で記念講演が行われます。研究会は防火専門家15人で構成され、2009年度から東京を中心とした老人福祉施設で、計9回の防火研修会や計17施設での出前講座を実施してきました。今回の受賞は、研究会のこのような実践活動や防火マニュアルの編集、配布、さらには図上演習や防火すごろく、映像資料を使った新しい防火教育の展開が高く評価されました。

2006年に長崎県大村市の高齢者福祉施設火災で7人が亡くなったのを始め、2008年には仙台市で負傷者33人、2009年には群馬県渋川市で死者10人、2010年には札幌市で死者7人、2013年には長崎市で死者5人の火災がいずれも高齢者福祉施設で起きています。夜間の人員不足や建物配置、非常時の対応に関する教育不足が課題として挙げられていますが、一番の問題は施設側に「全員救助」の避難戦略が欠けていることでした。

そこで研究会は出前講座、施設視察などを通じて施設関係者の啓発に力を入れてきましたが知識の伝授だけでは個々の施設に合った対策を立案しにくいため、大西准教授が中心となって新しい防火教育に取り組みました。

その一つが図上演習「FIG (Fire Imagination Game) マニュアル」の提案です。100分の1の施設の平面図を囲んで出火時刻や出火場所などの火災シナリオを皆で話し合い、時間経過に沿って各々がとるべき行動を考えてもらいます。特に工夫したのは、職員や入所者の模型を用意してチェスの駒を置くように各々の居場所を落とし込み、コマを動かしながら考えてもらう点です。様々なシナリオを試しつつ火災時の弱点や意外な盲点に、職員自身が気づき、具体的な改善行動につながります。ある施設の図上演習では、火災時に入浴中で裸の入所者をどのように避難させるかが問題となり、その後、バスローブを脱衣室に常備して備えることにしたそうです。

大西准教授は火災事例や図上演習など現場から得た問題点を集約し、各施設に見合った解決手段を考えるための実戦ツールとして、2014年1月に「防火すごろく」を完成させました。当時の大西研究室4年生、北川洋次さんが卒論として制作。2013年に長崎市で起きた古い加湿器の過熱による火災の教訓から、「古い家電製品、まだ使えるが買い換えるべきか?」との問いに皆で考えます。「利用者が持ち込んだカーテンをそのまま使っている」というケースでは「着火するとすぐ天井まで燃え広がるので、クリーニング屋で難燃加工を」という解説があり、必要な防火知識が身につく工夫を凝らしています。「自分の持ち場以外で出火したときに、担当する利用者を放置して駆けつけることができるか」という問いには、たいていの職員が頭を悩ませるそうです。すごろくは、A1判からA2判の大きさで、計50枚作成され、各地の施設で防災学習教材として活用されはじめています。

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(広報室)