[農学研究科]植物のデンプン合成を制御する遺伝子を特定

2015年02月26日

神戸大学大学院農学研究科の深山浩助教、三十尾修司教授、畠中知子准教授、杉野充保元院生、森田隆太郎院生らの研究グループは、イネを対象とした実験で植物のデンプン合成を制御する遺伝子を世界で初めて特定しました。この研究果「CO2 Responsive CCT protein, CRCT Is a Positive Regulator of Starch Synthesis in Vegetative Organs of Rice」が2月25日午前9時(米国東部時間、日本時間25日午後11時)に米国の学術誌「Plant Physiology」に掲載されました。大気中の二酸化炭素濃度が高くなる中で、これに対応した作物の開発にこの研究成果が役立ちそうです。

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研究の背景

現在、大気中の二酸化炭素濃度は増加しており社会問題となっています。一方、植物にとって二酸化炭素は、光合成を行いデンプンを合成するための原料なので二酸化炭素濃度の上昇は好都合と言えます。実際に二酸化炭素濃度の高い条件で作物を育てると、デンプンの合成が促進され、生育も旺盛になり、収量も増加します。しかし、どのように植物が遺伝子レベルで二酸化炭素濃度の変化に適応しているのか、またデンプンの合成能力が調節されているのかは不明でした。

本研究の着眼点

研究グループは二酸化炭素濃度が高い条件で育てた植物について遺伝子の働きを詳しく分析しました。その結果、CO2 Responsive CCT Protein(CRCT)と名付けられた、機能が未知の遺伝子の働きが二酸化炭素濃度が高いと活発になることに気づきました。CRCTはCCTドメインという遺伝子の発現調節にかかわるタンパク質に共通する構造を持ちます。私たちは、このCRCTが植物の二酸化炭素濃度の変化への適応に関係する遺伝子の発現調節に働いているのではないかと考え、研究を進めることにしました。

研究内容

イネを実験材料としてCRCTの働きについて研究しました。イネは光合成によって作った糖を茎のような部位(葉鞘と稈)にデンプンとして貯蔵します。CRCTの働きを遺伝子操作により活発にさせると、葉鞘や稈におけるデンプンの蓄積量が劇的に増加しました。一方、CRCTの働きを弱めるとデンプンがほとんど蓄積されなくなりました。CRCTはデンプン合成に必要な遺伝子(酵素や輸送体)の働きを一括制御するマスタースイッチのような役割を持っていることがわかりました。

将来への展望

CRCTは植物にとって重要なデンプン合成の調節に働くことから、農作物の生産性に深く関わっていることが予想されます。また、二酸化炭素濃度が高い条件で働きが活発になる遺伝子であり、今後の地球環境への植物の適応を考える上でもカギとなる遺伝子と考えられます。さらに、イネでCRCTの働きを強めると、茎において多量にデンプンを蓄積し、そのレベルはジャガイモと同程度でした。イネの収穫時において茎は不要な部位ですが、デンプンが蓄積していればバイオエタノール生産等の材料として利用可能となります。二酸化炭素濃度の収量への効果、茎のデンプン含量はイネにおいて品種間差があることがわかっています。それらの形質とCRCTの関係を明らかにすることができれば、将来的な二酸化炭素濃度の高い環境に高度に適応したイネの育種に役立てることが可能となります。私たちはCRCTの研究を、作物の生産性の改良、さらには人類の未来に役立つ次世代型作物の開発につなげたいと考えています。

(農学研究科、広報室)