神戸大学発達科学部と神戸大学サイエンスショップの主催により、2009年3月20日 (金・祝) 11:00~21日 (土) 12:30に、神戸大学瀧川記念学術交流会館において、フォーラム「理系AO入試が開く科学者へのトビラ ―高大連携による人材の育成をめざして―」(理系AO入試フォーラム) を開催いたしました。高校関係者を中心に、大学関係者、高校生、大学生など約70名の参加がありました。

第1日目の昼に行われた「ミニシンポ」では、ポスターセッション、基調講演、 招待講演、先輩セッションが行われました。理系AO入試を行っている大学などからの6件のポスター発表に引き続き、千葉大学の上野信雄教授によって「若者の可能性を信じ続けた 教育の改革15年: 急がばまわれ」という題で基調講演が行われ、大学・高校教員の間に有機的ネットワークを形成すること、入試への取り組みにあたって 研究者として実力のある大学教員を参画させ、形式的活動をやめて自由なサロン的雰囲気を醸成すること、などの重要性が強調されました。
その後、九州大学アドミッションセンターの渡辺哲司氏による 講演「AO入試、理系、入学後の学習」で、理系AO入試の現状と課題についての問題提起があったのに続き、東北大学の橋爪秀利氏、東京薬科大学の都筑幹夫氏が、それぞれの大学の特色ある理系AO入試を紹介しました。更に、北海道大学に今春入学予定の藤田拓矢さん、名古屋大学に今春入学予定の加藤悠爾さん、神戸大学2年進学予定の神谷麻梨さん、愛媛大学3年次から大学院への早期進学予定の野村勇太さん、首都大学東京で大学院進学予定の谷田家菜さんと伊佐美紀さんの6名が、自身のユニークな経歴について 紹介しながら、研究活動や入試についての意見をも含めた講演を行いました。

夜に行われた「交流会」では、ジュニアキャリアカフェとして、高校での科学研究の進め方や将来へ向けてどのようにキャリアパスを 描いていったらいいかなど、高校生、大学生、高校・大学関係者がざっくばらんに語り合う場が設けられました。
第2日目の朝に行われた「ワークショップ」では、高校における科学研究の進め方について、広島大学の山本卓氏による「SSHによる高大連携の実践」、京都市立堀川高校の飯澤功氏による「課題設定における3つのカン違い」の2つの招待講演によって、大学からの支援と、高校における指導方法の両面からの講演がなされました。
その後の自由討論では、岡山県立岡山一宮高校講師の筒井延宏氏と科学技術振興機構の進藤明彦氏によるコメントに引き続き、高校で科学研究を指導する際にどういう問題があるか、21世紀に求められる科学者像とはどのようなものか、高校生の研究をどう評価しエンカレッジするか、高校での科学研究を活かしたAO入試をどう制度設計するか、など、多岐にわたって活発なやり取りが行われました。
その中で、高校での課題研究や実験を指導する立場からの悩みや、高校と大学との間のジレンマなどに関する議論がなされました。
司会の中川和道発達科学部教授は、AO入試は決して一般入試からの逃げ道ではなく、通常の受験準備に劣らないだけの時間をかけて研究に打ち込んだ学生を歓迎するし、高校の教員には、一般入試の受験指導に劣らないだけの研究指導をして欲しい、 というメッセージで議論を締めくくりました。