神戸大学は2月3日、公開シンポジウム「出光佐三の経営理念と日本型資本主義」を、開催しました。

出光興産を創業し、家族主義経営でも知られる出光佐三氏 (1885~1981年) が、本学の前身校の神戸高商を卒業して100周年 (2009年) になります。近年の厳しい経済状況を背景に、日本型資本主義をめぐる論議が高まるなか、氏に大きな影響を与えた神戸高商の教育とその後の経営実践に注目し、日本企業の経営に提言するため、シンポジウムを企画しました。
第1部の講演ではまず、大学院経営学研究科の加護野忠男教授が、当時の神戸高商は「拝金型資本主義へのアンチテーゼ」を教えていた、などと紹介。さらに賀川豊彦らの例を挙げ、神戸の街が人間重視の日本型資本主義の形成にかかわっていたなど、時代的な背景を指摘しました。
続いて出光興産の天坊昭彦会長は、出光氏が高商で学んだ人間尊重の精神や大家族主義が、今も企業理念として継承されている、などと語りました。また、2006年の同社上場に至る決断の背景などを、写真も交え詳しく紹介しました。最後に新野幸次郎・六甲台後援会理事長 (元学長) は、水島銕也・高商初代校長が出光氏ら学生を深い愛情で教え育てたことを紹介し、大学での人間教育の重要性を強調しました。

第2部のパネルディスカッションでは、経営学研究科の三品和広教授をコーディネーターに、天坊会長、加護野教授、宮本又郎・関西学院大学大学院経営戦略研究科教授が登壇 (写真下)。出光氏が残し現在まで受け継がれている精神を、それぞれの立場でどの様に理解して活かすか、今後の日本企業の経営理念はどう変化していくべきなのか、などを論点に、議論を深めました。
会場になった神戸大学出光佐三記念六甲台講堂には、定員を上回る550名余の参加者が詰めかけました。エントランスには、出光氏の毛筆による卒業論文『筑豊炭及若松港』や水島・初代校長に関係する本が展示され、関心を集めました。