神戸大学

講演会「貧困と野宿を考える-野宿者襲撃と若者たち-」を開催しました

2010年05月24日

5月11日、学生ボランティア支援室の新入生歓迎講演会「貧困と野宿を考える-野宿者襲撃と若者たち-」を実施しました。

4~5月にかけて実施した「「夜回り」で野宿している人に出会ってみませんか?」という企画とともに、学内で野宿者問題・貧困問題への理解を深める取り組みの一環として行いました。講演会には、新入生、上級生、教職員、地域住民の方合わせて30名以上が参加しました。

講師の生田さん (野宿者ネットワーク代表、ホームレス問題の授業づくり全国ネット共同代表) は、学生時代に初めて大阪・釜ヶ崎を訪れ、その後25年以上日雇い労働者や野宿者の支援活動に携わってこられました。初めて釜ヶ崎を訪れた時、野宿者はやはり普通の人と何か違うのだろうかと思っていたけれど、話をしてみると、高齢でアルミ缶集めなど重労働をしながら生活している人たちはとてもまじめで、「人様の世話にならず働いて生きていきたい」と語る人も多く、「日本では正直者が野宿しているのか」と衝撃を受けたそうです。

生田さんは「全国で不安定就労から失業、貧困、野宿へ」という流れが広がっていると語ります。最近は、女性や若者の野宿も増えていて、「派遣の仕事がなくなって寮を出て行くところがない。生活に困って知り合い何人にも借金して、その返済に困っている」という30歳の男性からの相談などがあるそうです。

講演会「貧困と野宿を考える-野宿者襲撃と若者たち-」

野宿している人への夜回りを続けながら、直面する最大の問題の一つが「襲撃」だと言います。殴る蹴る、エアーガンで撃ちまくる、生卵をぶつけるなどの襲撃をこれまで何百回も聞いてこられ、一番ひどかった例では、いきなりナイフで眼球を突かれたということもあったそうです。やっているのはほとんどが10代の少年グループで、つっぱりもいれば優等生もいて、誰がいつ野宿者を襲うかわからない状況です。その背景には、大人が「ホームレスとは目を合わせてはいけない」「喋りかけられても無視しなさい」「あんな風になりたくなければ勉強しなさい」など、差別的な発言をしていることが影響しているのではないかとのことでした。ちなみに、「子どもが野宿者を襲うことはあるが、野宿者が子どもを襲った話を聞いたことはほとんどない」そうです。

欧米では、1980年代では若者の失業や野宿が増え始め、今では日本とは比較にならないほど多くの人が野宿をしているそうです。「日本は欧米を20年遅れで追いかけている」と言われ、現在は親に支えられて生活している若年の不安定就労者が、今後野宿になる可能性は高いとのことです。

生田さんは最後に「高校生が100人いれば全員違うように、ホームレスってこんな人たちというのはない、一人一人と話していくしかない」「世の中の野宿している人や貧困状態にある人を、これまでと違った目で見てもらえるとありがたい」と語って講演を終えました。参加した学生からは「自分自身の問題だと感じた」「ホームレスの人も私たちと変わらない普通の人だと感じた」「子どもへの教育が重要」などの感想が寄せられました。

(都市安全研究センター学生ボランティア支援室)