神戸大学

英語でスピーチする高校生も 熱気こもった神戸模擬安保理大会

2013年08月29日

神戸大学社会科学系教育研究府と法学部主催の「神戸模擬安保理大会」が8月27日 (火) 法学部第2学舎で開かれました。午前9時からの大会には高校生15人、法学部1回生有志11人に加え、国際政治学を専門とする大学院博士課程院生2人も参加。2人1組で常任理事国5カ国と非常任理事国10カ国のうち議長国を除く計14カ国の代表団を構成。議長国・アゼルバイジャンは実行委員会の多湖淳 (たごあつし) 法学部准教授が務めて、非公式協議から積み上げて公式会合、公式発言などを繰り返し、最終的に「米国修正案」を採択しました。

模擬安保理は、国連の多国間外交をロールプレイングで学ぶ教育手法の一つで、15カ国が参加する安全保障理事会を模すものです。今回は初めての試みのため近辺の兵庫県立神戸高校、兵庫高校、長田高校に参加を呼びかけました。

今回の模擬安保理大会で取りあげた事例は「8月27日、アフリカ・マリに派遣されている平和維持部隊が武装集団から大規模な攻撃を受け、30人の兵員が死傷し、20人の国連職員と兵員が同集団により軟禁されている」というものでした。参加者は7月以降、自分が演じる国の立場を調べ、議論のよりどころとなる「訓令」を作成し、本番の会議に臨みました。

会議では議長役の多湖准教授が本物さながらに「ギャベル (木槌)」を使いつつ非公式協議で発言を募り、派遣している兵員の数について現状維持の米国案、増強のフランス案、削減のルクセンブルグ案が提出されました。そこで議長が「今、AFP通信から入ったニュースでは未確認情報の断り付きで人質は全員殺害と報じています」といった追加情報を伝達。緊迫する中で「各国代表」はお互いの意向を探ったり、提案に耳を傾けたりしました。ポイントになったのはそれぞれが代表した「国」の立場を反映した行動を取ることで、たとえばオーストラリア代表になった法学部1回生の女性は「オーストラリアは米国の同盟国。米国案に重きを置きつつ、人質全員殺害の情報がある中で派兵をどう考えるかです」と答えていました。

昼食後には、明石康・元国連事務次長 (神戸大学特別教授) が激励のコメント。国連の多面性・多様性を理解したうえでの模擬安保理交渉の重要性を強調し、学生にその点への配慮を行うようご指導いただきました。

午後のセッションでは、米国、フランス、ルクセンブルグの3カ国から修正案が出され、最終的に米国案が賛成13、反対0、棄権2で採択されました。米国の修正案は当初あったアルカイダという文言を抜き、アフリカ各国への配慮を入れるなどの工夫をしていました。イギリス代表を務めた女子高校生2人は「夏休み前に参加を決めてからずっとイギリスの立場について考え、用意した英語のスピーチに多湖先生から手を入れていただきました。国際社会の仲介者といわれて、各国の勢力の均衡に目を配るイギリスの姿勢を反映させるために何回も打ち合わせしました」と話しました。また、傍聴していた兵庫高校の教諭は「大学生たちがそれとなく高校生たちをサポートしているのに感動しました」と話しました。

ジャッジメントは明石康・元国連事務次長や法学研究科の教授陣が務め、最優秀賞 (明石賞) によどみのない英語でスピーチし、冷静に各国と対応するなどパフォーマンスが優れていた県立長田高校3年、西馬圭吾さんと同1年、杉本優太さんのペアが選ばれました。

この日の大会は7時間半の熱闘。高校生たちは「来年も是非参加したい」と意欲を燃やしていました。

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(広報室)