神戸大学

留学生センター創立20周年記念国際シンポジウムが開かれました

2013年11月11日

神戸大学留学生センターでは今年設立から20年を迎えることを記念し、去る10月25日(金)に「世界の日本学の発展と日本語教育の課題 ―留学生センターの今後の役割―」と題した国際シンポジウムを開催いたしました。

本シンポジウムは、世界各地の日本学・日本語教育研究機関で御活躍の本学ゆかりの方々を中心に講演者をお迎えして、世界の日本学と日本語教育を俯瞰し、センターがこれから歩むべき道筋を展望する目的で開かれました。

「世界の日本学の発展と日本語教育の課題」と題する基調講演は、本学大学院を修了されたセルダヘイ・イシュトヴァーン氏 (駐日ハンガリー特命全権大使) からいただきました。作家・宮本輝氏との出会いをきっかけに、鈴木正幸先生 (当時文学部助教授) の下で学ばれ、そして帰国後の民主化運動の中で教育研究歴を積まれ、ブタペスト大学初代日本語学科長を経て、駐日大使に就任された大使の豊富で多彩なご経験に裏打ちされた、興味深い講演でした。さらに大使は、中国語や韓国語への関心が高まる中にあっても、ハンガリーの人々にとって日本語及び日本学は今なお魅力を放ち続けていると述べられ、日本に対する理解の重要性を語りかけられました。

その後、4名の講演者から特別講演をいただきました。

本学で博士号を取得された徐一平氏 (北京外国語大学北京日本学研究センター長・教授) からは「日本研究を目的とする日本語教育及び日本文化理解に根差した日本研究」と題し、中国における日本語教育と日本研究のこれまでと現状について講演をいただきました。日本語学習者の70%近くが大学学部生である中国では、日本学研究者の予備軍とも呼ぶべき学習者が多いという指摘とともに、今後は、日本語学習を入り口として研究者に育つ人材と、専門領域の学習から出発して研究者を目指す人材とが相互補完的に協力していくことが優れた教育研究の成果につながるだろうという示唆に富む指摘がなされました。そして、締めくくりとして、中国における日本語教育の拡充に大きな役割を果たした「大平学校」の提唱者である大平元首相の言葉を引いて、日中両国の政治・経済・文化の「三輪車」式交流の重要性を強調されました。

続いて、本学で教鞭をとられたエドワード・マック氏 (ワシントン大学日本語学科主任・准教授) から「21世紀において日本 (学・語) を教えるということ」と題する興味深い講演をいただきました。アメリカにおける日本語学習が日本の経済力に対する認識により高まった時代から時を経て、現在ではポストコロニアル理論・グローバリゼーションによりパラダイムシフトを迫られる状況であること、また、留学生の増加による教育現場の多国籍化から日本語教育にも様々な変革が求められていること、さらに、バブル経済崩壊後は中国語学習者が増加していることが指摘されました。そして、このような状況にあって、「日本」および「日本語」の概念の解明こそが21世紀の日本学・日本語教育学の核心であるという考察がなされました。

次に、本学の留学生センターなどで学ばれたロディカ・フレント氏 (バベシュボヨイ大学日本学科主任・准教授) から「ルーマニアの日本学及び日本語教育の現景―知識から学問的な知恵の探求へ―」と題する講演をいただきました。氏は、1989年のルーマニア革命以降、高等教育の改革に伴い日本語学習者が増加してきた歴史につづき、2008年に始まったボローニャ制度により迫られている日本語教育の改革とその課題について述べられました。そして、環境の変化から日本語教育研究の再考を促される中で、目指すべき方向は、知識の習得に留まらない知恵の探求であると締めくくられました。

最後に、日本語教育の推進や大学のグローバル化に積極的な教育機関の立場から、宮崎里司氏 (早稲田大学日本語教育研究科・教授) に「グローバル化をめざす大学の留学センターの在り方」と題する講演をいただきました。2008年の留学生30万人計画以降、グローバル30をはじめとする大学の国際化政策が打ち出される中での早稲田大学と神戸大学の現状を、留学生、派遣留学生、外国人教員などの比率を例に引きながら、比較して示されました。そして、今やライバルは国内ではなく世界の大学であることが世界標準となっているという警鐘を鳴らすと共に、2014年竣工予定の中野国際コミュニティなどの早稲田大学の取り組みは、留学生センターの役割が「ヒト」の受入・派遣から大学のグローバル化の発信基地となる変革を表している、そのためにはセンターが組織的に社会的な影響を与える存在になることが望まれると力強く結ばれました。

その後に続くパネルディスカッションでは、留学生センターのリチャード・ハリソン教授の司会進行により、以上5名の方々がそれぞれの経験と立場から世界におけるこれまでの日本学の発展とこれからの日本語教育の課題を報告され、留学生センターが果たす今後の役割はこれからもますます大きくなることが再認識されました。引き続き参加者を交えて活発な質疑や有意義な討論が行われました。

今回の国際シンポジウムは、世界の日本学の発展と相まって、今後とも留学生センターが担うべき日本語教育をはじめ交流推進、相談指導の役割を展望するよい機会となりました。

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(留学生センター)