神戸大学

[医学研究科] 廣明秀一教授らが岐阜大・京大と共同で自然免疫にかかわる鍵分子MyD88の立体構造を解明しました

2009年06月09日

論文タイトル
Structural basis for the multiple interactions of the MyD88 TIR domain in TLR4 signaling
著者
  • 岐阜大学医学研究科 大西秀典*、加藤善一郎**、季愛蓮、折居建治、木村豪、近藤直実
  • 京都大学工学研究科 杤尾豪人**、白川昌宏
  • 神戸大学医学研究科 廣明秀一

*筆頭著者、**責任著者

学会誌名等
Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA
概要

人の体に侵入してきた病原体や異物から生体を防御するしくみである免疫システムの一つに、「自然免疫」というしくみがあります。 自然免疫が活性化するのに必要なシグナル伝達経路には多くのタンパク質がかかわっていますが、 そのうちの鍵となる分子の一つに、MyD88というタンパク質があります。 今回、MyD88のうちの「TIRドメイン」部分の立体構造と働きが、廣明秀一特命教授 (神戸大・医学研究科・構造生物学)、 近藤直実教授 (岐阜大・医学研究科・小児病態学)、白川昌宏教授 (京都大・工学研究科・生体分子機能工学) の共同研究チームにより決定されました。

人の細胞には、細菌の感染を検知するためのセンサーとして、細菌の細胞膜成分 (リポポリサッカライド) を検知して免疫細胞を活性化させるTOLL様受容体4 (TLR4) というセンサーがあります。 MyD88は、Malという別のタンパク質と共同して、 TLR4が検知した信号を、遺伝子の発現のスイッチに伝えるという重要な役割があります。

研究チームは、核磁気共鳴法 (NMR法) という手法を用いて、MyD88の立体構造解析を進めました。 MyD88のTIRドメインには、MalのTIRドメインに結合するインタフェースが二か所と、下流にシグナルを 伝えるためのインタフェースが一か所あることがわかりました。 またMalとMyD88は、互いによく似た分子にもかかわらず、Malだけが直接TLR4に結合して、 MyD88はそれを介添えするという詳細なメカニズムがわかってきました。こうしたメカニズムの解明とタンパク質の立体構造は、 自己免疫疾患やアレルギーなどの、新しい診断法や治療薬の開発を進展させるのに貢献します。

この研究の成果は、専門誌・米国科学アカデミー紀要 (Proc Natl Acad Sci USA) オンライン版に発表されました。

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