神戸大学

[農学研究科] 三宅親弘准教授らが高等植物葉緑体でのメチルグリオキサール代謝を世界で初めて明らかにしました

2011年05月06日

論文タイトル
Methylglyoxal functions as Hill oxidant and stimulates the photoreduction of O2 at the photosystem I: A symptom of plant diabetes
学会誌名等
Plant, Cell & Environment Online
DOI: 10.1111/j.1365-3040.2011.02344.x
概要

本論文において、高等植物葉緑体でのメチルグリオキサール (Methyglyoxal, MG) 代謝を世界で初めて明らかにしました。MGは、生物が生きていくために必要な生体内糖代謝において不可避的に生成するアルドケト化合物であり、一度生成してしまうとDNAあるいはタンパク質を傷つけ、細胞の営みを破たんさせ、ヒトにおいては糖尿病を誘引する危険因子として古くから知られています。著者らは、ヒト以上に、自らの細胞内に光合成を通して糖を蓄積する植物が、いかに糖尿病を克服しているのか、あるいは今だ未知である植物での糖尿病発症のメカニズムに興味をもち、世界に先駆けてその解明に取り組んできました。

その結果、葉緑体がMGの解毒酵素aldoketoreductase (AKR) をもつことを見出しました。当初、この酵素によりMGが安全に消去されていると考えられましたが、植物が光合成をおこなう条件では、MGはAKRにより無毒化されず、葉緑体で活性酸素を極めて大きな速度で生成することを発見しました。つまり、カルビン回路の糖代謝で生成するMGは、チラコイド膜光合成電子伝達系と相互作用し、スーパーオキシドラジカルの生成を促進し、糖尿病を誘発する危険性をもつことにより、植物での糖尿病発症メカニズムを明らかにするとともに、世界で初めて「植物糖尿病 (Plant Diabetes)」というコンセプトを提唱しています。