国連は2008年、キュリー夫人のノーベル化学賞受賞から100年目に当たる2011年を「世界化学年」(International Year of Chemistry: IYC 2011) とすることを決めました。2011年はまた、国際純正・応用化学連合 (IUPAC) が設立されて100年目にも当たります。
世界化学年事務局はシンポジウム等の祝典諸行事と並んで、化学の研究や普及で優れた業績をあげた世界の女性化学者を顕彰する賞を設けました。日本化学会から推薦されていた神戸大学の相馬芳枝・特別顧問は、このほど、16カ国23人のうちの1人に選ばれました。日本からは、相馬特別顧問だけです。
相馬特別顧問は1965年、神戸大学理学部化学科を卒業。通産省大阪工業技術試験所 (現産業技術総合研究所) に入所し、銅カルボニル触媒を代表とする新しいカチオン型金属カルボニル触媒を発見しました。これを用いることにより、従来高温・高圧を必要としていたオレフィンのカルボニル化反応を常温・常圧で実施可能にし、第三級カルボン酸の省エネルギー的合成法を確立しました※1。また1990年代には、地球の温室効果防止のために二酸化炭素の再資源化の研究に従事しました※2。
これらの研究が評価されて、猿橋賞 (1986)、有機合成化学協会賞 (1989)、科学技術庁長官賞 (1993)、触媒学会賞 (2001)、日本化学会学術賞 (2001) 等を受賞。2008年に日本化学会フェローに選ばれたほか、ゴードンカンファレンス、ノーベルシンポジウム等で講演を重ねています。
相馬特別顧問はまた、男女共同参画の推進にも貢献。2002年には日本化学会の男女共同参画推進委員会を立ち上げ、初代委員長を務めました。さらに、理工系の68学協会が加盟する男女共同参画学協会連絡会の発足・運営に尽力し、第3期委員長を務めました。5年前からは「女子中高生のための関西科学塾」の実行委員長等を務め、科学や科学研究の魅力を語ったり、理系を目指す女子中高生を励ましたりしています。
8月初め、プエルトリコで開かれるIUPAC (国際純正・応用化学連合) 総会で表彰される予定です。
日本化学会の発表を受け、本学は6月17日、構内で記者会見を開き、相馬特別顧問と武田廣理事・副学長 (研究担当) が出席しました。