神戸大学

[農学研究科] 深山浩助教らが光合成における二酸化炭素の固定反応を触媒する酵素ルビスコの触媒速度を高めることに成功しました

2011年07月05日

論文タイトル
Functional Incorporation of Sorghum Small Subunit Increases the Catalytic Turnover Rate of Rubisco in Transgenic Rice
著者
Chie Ishikawa, Tomoko Hatanaka, Shuji Misoo, Chikahiro Miyake and Hiroshi Fukayama
神戸大学大学院農学研究科
学会誌名等
Plant Physiology
DOI: 10.1104/pp.111.177030
概要

深山浩助教らが光合成における二酸化炭素の固定反応を触媒する酵素リブロース-1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ (ルビスコ) の触媒速度を高めることに世界で始めて成功しました。

イネ、ムギ、ダイズなど主要な作物の多くは、その光合成の反応様式からC3植物に分類されます。C3植物のルビスコの触媒速度はとても遅く、光合成速度ならびに生産性の主要な制限要因であることが指摘されてきました。そのため、これまでにルビスコを改良する試みが盛んに行われてきましたが、目立った成果は得られていませんでした。深山浩助教らは、C3植物から進化した二酸化炭素濃縮回路をもつC4植物が触媒速度の高いルビスコを持つことに着目して研究を進めました。ルビスコはRbcLとRbcSの2種類のタンパク質で構成される酵素ですが、RbcSの役割に関してはよく分かっていませんでした。このRbcSが触媒速度に重要ではないかと考え、イネ・ルビスコの2.5倍の触媒速度を示すC4植物ソルガム・ルビスコのRbcSをイネに導入しました。その結果、イネ・ルビスコの触媒速度が1.5倍に高まることが明らかとなりました。

以上の結果より、触媒速度の高いRbcSを導入するという比較的簡単な方法により、C3植物のルビスコの触媒速度を改良することに成功しました。この方法は、イネ以外のC3植物にも応用可能であり、将来的な作物の増産、安定供給に貢献し得る技術と考えられます。