神戸大学

菅澤 薫 教授らが、ユビキチン化を介したDNA損傷修復の新たな制御機構を明らかにしました

2012年01月25日

論文タイトル
The molecular basis of CRL4 DDB2/CSA ubiquitin ligase architecture, targeting, and activation
著者
Eric S. Fischer, Andrea Scrima, Kerstin Böhm, Syota Matsumoto, Gondichatnahalli M. Lingaraju, Mahamadou Faty, Takeshi Yasuda, Simone Cavadini, Mitsuo Wakasugi, Fumio Hanaoka, Shigenori Iwai, Heinz Gut, Kaoru Sugasawa and Nicolas H. Thomä
学会誌名等
Cell
147: 1024-1039 (2011)
概要

バイオシグナル研究センター、理学研究科の菅澤 薫 教授らの研究グループは、スイスFriedrich Miescher InstituteのNicolas H. Thomä博士らとの国際共同研究で、紫外線によるDNA損傷の修復制御に関わる新たな分子機構を明らかにしました。

私たちの皮膚に紫外線があたると、細胞のゲノムDNAが損傷を受けます。DDB1-DDB2タンパク質複合体 (UV-DDB) は紫外線によってゲノムDNAに発生した損傷を効率良く認識して結合し、その修復を開始する重要な役割を担っています。E群色素性乾皮症の患者ではDDB2タンパク質が生まれつき変異を起こして正常に働かなくなっており、そのため皮膚がんを非常に起こしやすいことが知られています。

UV-DDBはタンパク質のユビキチン化を触媒するCUL4-ROC1複合体と相互作用することが知られていましたが、DNA損傷に結合したこの超分子複合体の全体構造が原子レベルで明らかになりました。ユビキチン化の活性中心はDNA損傷周囲の一定範囲の空間を自由に動き回ることができ、これによりDDB2自身のN末端領域がユビキチン化を受けて分解されます。そして、このN末端領域に変異を導入してDDB2がユビキチン化を受けないようにしたところ、細胞の紫外線感受性が著しく増強されることが明らかになりました。この成果はDNA損傷の修復と細胞応答を制御する分子メカニズムの理解に加え、紫外線に対する新たな防護法の開発にもつながることが期待されます。