神戸大学

[医学研究科] 吉田優准教授らの研究グループは、メタボローム解析により、大腸がんの早期診断バイオマーカーを発見しました

2012年07月13日

論文タイトル
A novel serum metabolomics-based diagnostic approach for colorectal cancer
著者
Shin Nishiumi, Takashi Kobayashi, Atsuki Ikeda, Tomoo Yoshie, Megumi Kibi, Yoshihiro Izumi, Tatsuya Okuno, Nobuhide Hayashi, Seiji Kawano, Tadaomi Takenawa, Takeshi Azuma, Masaru Yoshida
学会誌等
PLOS ONE
概要
図1 大腸がん治療の現状

大腸がんはがん死因の上位に位置し、日本においても、近年、男女ともに大腸がんの増加が目立っており、大腸がんの完治を目指すため、その早期発見が求められています。しかし、従来の簡便な大腸がん検査法で陰性であっても、大腸がんの発症を否定することはできず、大腸がんを早期に、かつ、より精確に発見できる血液マーカーは存在しないのが現状でした (図1)。そこで、吉田優准教授らの研究グループは、ガスクロマトグラフィー質量分析 (GC/MS) を用いた血清メタボローム解析により、早期診断可能な大腸がんバイオマーカーの探索を実施しました。

図2 メタボローム解析による大腸がん診断予測式の作成

血清代謝物データの分析の結果、大腸がん診断に利用できる4種類のマルチバイオマーカー (2-ヒドロキシ酪酸、アスパラギン酸、キヌレニン、シスタミン) を発見し、これら4種類の代謝物データに基づいた感度、特異度の高い大腸がん診断予測式を作成しました (図2)。検証試験の分析結果をこの予測式に当てはめた場合においても、高い数値を維持したことから、信頼性の高い診断予測式の構築に成功したと考えられます。さらに、構築した診断予測式は、ステージ0やステージ1といった早期大腸がん患者においても、高い感度を保つことも確認できました。

現在、臨床で使用されている腫瘍マーカーであるCEAやCA19-9は、特に、早期大腸がん患者に対しての感度が低いことが問題とされています。血清メタボローム解析に基づき構築できた予測式は、有用性の高いものであると考えられ、鋭敏な大腸がんスクリーニング検査法としてのメタボローム解析の可能性を見出すことができ、近い将来の実用化が期待されます。