神戸大学

[医学研究科] 森教授らの研究グループがヒトヘルペスウイルス6Bの感染時に働く受容体を世界で初めて発見

2013年05月14日

神戸大学大学院医学研究科の森康子教授らの研究グループはヒトヘルペスウイルス6B (human herpesvirus-6B: HHV-6B)、(以下HHV-6Bと略) の感染に必須である宿主 (ヒトの) 受容体CD134を世界に先駆けて発見することに成功し、米国科学アカデミー紀要電子版に14日付で掲載されました。

HHV-6Bは、ヘルペスウイルス科に属するヒトにのみ感染するウイルスで、生後6か月から1歳ぐらいまでの乳幼児期に初感染します。HHV-6Bが乳幼児に初感染することによって乳幼児は40度近い高熱を伴った突発性発疹症を発症し、ほとんどは治癒しますが、時にはけいれんや脳炎、脳症を発症し、重篤な後遺症を残します。

その後HHV-6Bは、宿主 (ヒト) の体内に生涯にわたって潜伏感染し、その後、骨髄移植や臓器移植後の免疫抑制状態の患者において再活性化し、脳炎、脳症を引き起こします。また、薬剤過敏症症候群においてもHHV-6Bは再活性化し、薬剤過敏症症候群の重篤化との関連性が重要視されています。

記者会見の様子

しかし、HHV-6Bに対する効果的な予防法や治療法は見つかっておらず、その開発は急務となっていました。

この受容体発見の成果は、HHV-6Bが引き起こす病気の解明のみならずHHV-6Bに対する抗ウイルス剤や抗体の開発すなわち予防法や治療法の開発にも大きく貢献するものと考えられます。

発表内容概略

ヒトヘルペスウイルス6Bの感染時に働くヒト (宿主) 受容体 CD134を世界で初めて発見

発表者
森 康子 (神戸大学院医研究科・臨床ウイルス分野教授)

神戸大学大学院医学研究科の森 康子教授らの研究グループはヒトヘルペスウイルス6Bの感染に必須である宿主 (ヒトの) 受容体CD134を世界に先駆けて発見することに成功しました。ヒトヘルペスウイルス6B (human herpesvirus-6B: HHV-6B)、以下HHV-6Bと略します。

HHV-6Bは、ヘルペスウイルス科に属するヒトにのみ感染するウイルスです。生後6か月から1歳ぐらいまでの乳幼児期に初感染します。HHV-6Bが乳幼児に初感染することによって乳幼児は40度近い高熱を伴った突発性発疹症を発症します。ほとんどは治癒しますが、時にはけいれんや脳炎、脳症を発症し、重篤な後遺症を残します。その後HHV-6Bは、宿主 (ヒト) の体内に生涯にわたって潜伏感染します。すなわち、私たちの体内にはHHV-6Bが潜伏感染しています。その後、骨髄移植や臓器移植後の免疫抑制状態の患者においてHHV-6Bは再活性化し、脳炎、脳症を引き起こします。また、薬剤過敏症症候群においてもHHV-6Bは再活性化し、薬剤過敏症症候群の重篤化との関連性が重要視されています。しかし、HHV-6Bに対する効果的な予防法や治療法は見つかっていません。そのためその開発は急務となっています。

神戸大学大学院医学研究科ではHHV-6Bのウイルス粒子に存在する特異的な糖タンパク質複合体の解析を精力的に行ってきました。この糖タンパク質複合体はウイルスの侵入時に宿主側の受容体に結合するという感染初期に中心的な役割をするタンパク質です。

HHV-6Bが我々の体内に感染するときに先ず宿主側(ヒトの体)の受容体を認識して我々の体内に侵入していきます。しかし、その特異的な受容体はまだ明らかではありませんでした。

この度、神戸大学大学院医学研究科・森 康子教授らの研究グループは(独)医薬基盤研究所・仲哲治プロジェクトリーダーらとの共同研究で、T細胞 に発現しているCD134がHHV-6Bの宿主受容体であることを世界で初めて発見しました。すなわちHHV-6Bのウイルス粒子にある糖タンパク質複合体が宿主受容体であるCD134と結合し、ヒトの体内へと侵入することによってウイルス感染が成立することが明らかとなりました。このCD134は、TNF レセプタースーパーファミリーの一種であり、刺激されたT細胞に多く発現しています。HHV-6Bも刺激されたT細胞で爆発的に増殖します。この受容体発見の成果は、HHV-6Bが引き起こす病気の解明のみならずHHV-6Bに対する抗ウイルス剤や抗体の開発すなわち予防法や治療法の開発にも大きく貢献するものと考えられます。


T細胞: Tリンパ球ともいう。リンパ球の一種で、骨髄で産生された前駆細胞が胸腺での選択を受け分化成熟したもの。末梢の血液中のリンパ球の70~80%を占める。

※研究内容の詳細については、米国科学アカデミー紀要 (Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America、略称: PNAS) (電子版) に5/13/2013の週に掲載予定。

※PNAS: 1914年に創刊された米国科学アカデミー発行の機関誌。対象範囲は自然科学全領域のほか、社会科学、人文科学も含む。特に生物科学・医学の分野でインパクトの高い論文が数多く発表されている。総合学術雑誌としては、ネイチャー、サイエンスと並び重要。1994年から2004年までの引用論文数は1,338,191で、科学専門誌として2位 (1位は生化学誌The Journal of Biological Chemistry)。