【挨拶】神戸から、日本、世界を変えよう

2020年01月06日

神戸大学長  武田 廣

明けましておめでとうございます。令和に元号が変わって初のお正月となりましたが、皆様方におかれましては、良い新年を迎えられたことと存じます。私の学長としての任期も残り1年余となり、悔いの残らぬように全力で職務を遂行する覚悟であります。

昨年を振り返っての大きな出来事として、「大学入学共通テスト」の柱となる英語民間試験の活用や記述式問題の導入が相次いで見送られる事態となり、入試担当の岡田理事をはじめ、学内でも様々な対応を迫られることとなりました。今回の入試制度改革については、国立大学協会でも時間とエネルギーをかけて検討しながら、結果として制度の根本的な問題に対する踏み込んだ議論ができなかった点は反省すべきだと思います。また一方で、高大接続改革が重要であることは論を待たないにしても、制度変更ありきで進められる入試改革議論に対して、本来の主体者である受験生、また制度を利用する国公私立大学が十分に関与できる形で検討が行われなかったことについて、一国立大学の学長として忸怩たる想いもあります。いずれにしましても、今年が最後の大学入試センター試験であり、昨年も申し上げましたが、我々大学人は受験生の人生を左右する重大な仕事に係わっていることを改めて肝に銘じて、これからの入試シーズンに対応していきたいと思います。

また、本学の重要なトピックスとしては、海事科学部を発展的に改組する新学部・海洋政策科学部(仮称)の2021(令和3)年度設置、潜在的なニーズ=ウォンツに基づく価値創造を追究するバリュースクール(V.スクール)の今年4月発足を発表することができました。新組織に魂を入れ充実した成果を上げるためには、引き続き困難な準備が続くと思いますが、関係の皆さんには頑張っていただきたいと思います。

私は学長就任以来、神戸大学が研究大学として評価を高めるため、様々な組織改革を進めてきました。文理融合の独立大学院・科学技術イノベーション研究科では博士課程も設置され、既に大学発ベンチャー企業5社を設立できました。当初は懐疑的な眼差しを向けられていた「文理融合」ですが、人類社会の課題を解決する基本的な考え方として評価を確立し、今や多くの大学が掲げていることは大変誇らしいことです。また、国際人間科学部では、全学部生に留学、海外研修などを義務づけたことが評価され、優秀な学生が集まっています。

振り返ってみると、本学は旧帝国大学など戦前から総合大学として歩んできた大学群とは成り立ちが異なり、常に変化・発展を目指すことを宿命づけられていると思います。神戸高商からの伝統を持つ神戸経済大学を母体に、神戸工業専門学校、兵庫師範学校、県立農科大学、県立神戸医科大学、近年では神戸商船大学などを統合して総合大学に発展しました。誤解を恐れずに言えば、神戸大学は発展途上の大学であり、まだまだポテンシャルを持っているのです。引き続き、この神戸の地から、日本さらには世界を変えるような、研究・人材養成を行うため、OB・OGも含めた神戸大学の全関係者が一丸となって改革に取り組みましょう。

実際のところ、基盤的経費の減少によって国立大学時代からの承継ポストを維持できなくなっている中で、論文数・高被引用論文数・国際共著論文数などは着実に増えており、高い成果を上げている皆さんの努力には改めて敬意を表します。ただ、他大学も努力を続けており、大学ランキングや文科省の予算配分で、既存の序列を打破するところにまで至っていません。その理由の一つに、本学が強みを持っている社会科学系の成果が正しく評価されていないことがあります。大学ランキングなどに使われる指標は、理系の研究論文の指標が中心で、人文社会系の研究を評価することが出来ていないのです。この点は、来年度の予算配分に、論文だけでなく著作物も研究者の評価に加える方向になったとのことですが、これに止まらず、今後も、人社系教員の研究成果を評価する方法を考案し、社会に発信していただきたいと思います。ルール作りを主導することが、神戸大学の評価を上げることにもつながります。

来年度に目を向けてみますと、昨年末に令和2年度予算及び令和元年度補正予算の閣議決定がありましたが、近年の傾向として、各国立大学へ配分される金額などが個別に示されず、一括計上が増えております。機能強化係数に基づく拠出分の重点支援③の16大学内での再配分についても、昨年度から行われている「成果を中心とする実績状況に基づく配分(共通指標)」や、「3つの重点支援による配分(KPI)」については、金額や配分率に変更があるようですが、詳細はこれからとのことです。その中で、令和2年度より実施される高等教育無償化の対象から漏れる、現に支援を受けている学生への経過措置分が別に計上されたと聞きました。国大協をはじめ、関係者が問題点をアピールした結果と評価はしますが、あくまで経過措置ということとなりますので、ここは注意深く見る必要があるでしょう。組織整備にかかる人件費分では、数理・データサイエンスセンター関係で1名が採択されたとのことです。また、国土強靱化の予算は昨年度よりは減少しているものの、今年度の補正予算で(名谷)総合研究棟及び図書館の改修が、また令和2年度予算では(明石)幼稚園園舎改修をはじめ、(六甲台)ライフライン再生や(住吉)宿舎急傾斜地安全対策なども措置されるとのことですので、施設の老朽化対策が少しでも進めばと思います。

また、今年は2022(令和4)年の神戸大学創立120周年に向けた募金活動を本格化していきます。昨年来、関係者の間で準備を進めていただき、これから趣意書などを持って協賛いただけそうな企業、OB関係者にお願いをしていくことになります。既にVスクール関係では高額の寄付をいただいておりますが、大学へのステークホルダーの期待は多岐にわたってきております。高度な研究と優秀な人材育成はもちろん我々のミッションですが、本学の取り組みが社会にしっかりと理解いただけるよう、私も含め全構成員が学内の情報を共有し、例えばSDGsなどの枠組みを通じて情報発信していかなければなりません。また、外部からのご意見をしっかりと受け止め、大学改革に反映することも重要です。国立大学にもこの4月から「ガバナンスコード」が適用されるとのことですが、民間企業で既に起こっている様々なガバナンス改革が我々国立大学にも否応なしに求められます。それはつまり、ガバナンスに関する問題が起これば、大学の活動や評価に致命的なダメージを与えてしまうことにもなります。それは先ほどの募金活動しかりです。ここにお集まりの皆さんには再度そのことを自覚いただきたいと思います。

先ほどの情報発信について申しますと、昨年は若手職員が中心になって、本学の発展の方向を社会に訴える統合報告書を発行することができました。財務情報だけでなく組織の全体像を社会に発信するために、企業が発行している統合報告書を大学も発行する挑戦に、職員のイニシアティブで取り組んでくれたことは、画期的なことです。教員とは異なる視点で大学を見つめている職員が、大学の進路を考えてくれることは、厳しい大学間競争を勝ち抜くために是非必要なことです。既にコスト削減プロジェクト推進会議(コストサクゲンジャー)の取り組みは、新たな発想で経費削減を進める役割が定着していますが、今後も職員の皆さんの積極的な挑戦をお願いしたいと思います。

また、学生諸君の課外活動での活躍にも目覚ましいものがあります。男子アメリカンフットボール「レイバンズ」が、関西1部リーグ3位になり全日本大学選手権に出場しました。私もスタンドから応援しましたが、学生諸君のエネルギーを頼もしく感じました。また、オフショアセーリング部は昨年3月、全日本学生外洋帆走選手権で優勝し、過去には海外の大会でも活躍してくれました。今年も学業はもちろん、各方面での活躍を期待しています。

最後となりますが、神戸大学の教職員、学生、そしてOBも含めた全ての大学関係者が誇りを持って、それぞれの立場で学問と神戸大学の発展に貢献していただくよう心からお願いして、新年のご挨拶とさせていただきます。